1989 is the number. Another summer. (Get down!) Sound of the Funky Drummer. Music is hitting your heart cause I know You Got Soul. (Brothers and Sisters!)
「ナンバー」「サマー」と続けて韻を踏む言葉は「ファンキードラマー」です。言うまでもなく、ジェイムズブラウンの曲名です。ヒップホップのドラムブレイクとして一番有名な曲です。その次には、ジェイムズブラウンの相棒のボビーバードの「I Know You Got Soul」が叫ばれます。チャックDは、まずこの冒頭において、このJBネタ二つをヒップホップサウンドの代名詞として挙げて、これが俺達の世代の音楽=ヒップホップだぞ!と高らかに宣言しています。
もっとも、この「Fight The Power」は、ファンキードラマーというよりは、「Hot Pants Road」(The J.B.'s, 1971)の色合いのほうが濃いですね。でも、このボムスクワッドによるグチャグチャサウンドで、ファンキードラマーも含まれているんですよね・・・? そのへんは僕はよく分かりませんが。
そして、その次にフレイヴァフラヴが言う「ブラザーズ&シスターズ!」は、1972年の『ワッツタックス』のジェシージャクソン牧師の言葉からの引用です。ソウルチルドレンを紹介するときに「Brothers & Sisters! "I Don't Know What This World Is Coming To"! The Soul Children!」と叫びます。このフレーズが、チャックDはいたく気に入っているようで、インタビューなどで何度も言及しています。また、この曲をサンプルもしています。1960年生まれのチャックDは小学六年生だったことになります。
Listen if you're missing, y'all. Swinging while I'm singing, giving what you're getting, knowing what I know while the Black band is sweating and the rhythm rhymes rolling.
「Swinging while I'm singing」における「swing」は、マルコムXの演説からの引用です。有名なスピーチ「投票か闘争か(The Ballot or The Bullet)」の一節「今の黒人は〈我らに勝利を〉を歌いすぎている。歌をうたっている場合ではない。拳を振り上げて抗議しなければならない。(Stop singing and start swinging.)」のことを言っています。
つづく「Giving what you getting, knowing what I know」は、このラップがチャックDの知識・知恵を拡散させるためのスピーチであることを宣言しています。カッコいいです。
次の一行も面白いです。というのは、自分たちパブリックエネミーのことを「the Black band」と呼んでいるからです。これはつまり、たとえば、デュークエリントン楽団・ライオネルハンプトン楽団・ルイジョーダンとティンパニ5・ジェイムズブラウン&JBズ・クール&ギャング・Pファンク、といった具合に連綿と続く黒人音楽の歴史の1ページに自分たちを置いているように聞こえます。今となっては何の違和感もありませんが、1989年の当時は、さすがにヒップホップ黎明期でもないにせよ、ちょうどヒップホップの人気が急激に拡大していた時代ですから、この宣言には重みがあっただろうと思います。
Got to give us what we want! Got to give us what we need!
Our freedom of speech is freedom or death. We got to fight the powers that be.
Fight the power! Fight the power! We've got to fight the powers that be!
「We don't know the game.」というのは、「We don't know the name of the game.」という意味。アメリカという国のマイノリティに対するやり方は、チェスなのかバスケなのかテニスなのか、なんの種目かも知らせずに勝負に参加させているようなもので卑怯だぞ、と言っています。
二行目の「What is this?」というのは、目覚めていない同胞を嘲っています。こういうのは、一種のジョークという意味でフレイヴァフラヴが道化を演じているようです。たとえば、
「おーい、オレの声が聞こえるか?」
「ダメだよ、まったく聞こえないよ!」
とか
「これから、絶対に、ゼッタイって言うな!」
というたぐいのジョークですね。
そして「Mental self-defensive fitness」というのは、前の段落で登場した「tough from the heart」と同じ意味となるでしょう。
Yo! Bum Rush The Show! You gotta go for what you know. Make everybody see in order to fight the powers that be. Let me hear you say, "Fight the power!" "Fight the power." We got to fight the powers that be!
"Yo! Bum Rush The Show"というのは、パブリックエネミーのアルバムのタイトルです。「おいみんな、突っ込むぞ!」という意味です。1987年の元歌(1987年)のほうでは、Hip-Hopのクラブに、入場料を払わずに済むよう全員で突っ込め、みたいな意味のようなのですが、ここにおいては「知恵を結集させて、みんなの力を合わせて権力と闘うぞ!」ということでしょう。
Elvis was a hero to most but he never meant shit to me. You see straight up racist that sucker was simple and plain. (Motherfuck him and John Wayne!)
Cause I'm Black and I'm proud. I'm ready and hyped plus I'm amped. Most of my heroes don't appear on no stamps. Sample a look back. You look and find nothing but rednecks for 400 years if you check. "Don't Worry Be Happy" was a number one jam. Damn, if I say it, you can slap me right here.
次に、大ヒット曲「Don't Worry - Be Happy」は、一度聴けば耳から絶対に離れない、万人の心に訴える魅力あふれたメロディーの曲で、1988年9月に全米POPチャート1位となりました。しかしこの曲は、偉大なジャズ歌手・ボビーマクファーリンのキャリアにとって唯一の汚点といってよいものです。現に、絶対にボビーはこの曲をライブで歌いません。・・・なぜか?
パブリックエネミーの「Fight The Power」は、スパイクリーの映画『DO THE RIGHT THING』のためにつくられた曲でした。タイトル曲でもあり、劇中でも繰り返し流れます。例の「ラジオラヒーム君」がビッグサイズのラジカセでこの曲を流しながら街を歩き回ります。「パブリックエネミー」という名前さえ劇中に登場します。
Seminer [noun] 1. A conference or other meeting for discussion or training. 2. A class at a college or university in which a topic is discussed by a teacher and a small group of students.