音楽と関係ある度:★★★☆☆
バラック=オバマがアメリカ合衆国の大統領に就任した。
長いあいだ切望されていたことではあるが、つい数年前までは実現性はまったくなかった。それが現実となった。つい1年ほど前、友人が「オバマは凄い勢いですね、本当に大統領になりそうな勢いですね」と言ったとき、僕は「断言してもよいが、アメリカで黒人が大統領になることはこれから先10年のあいだにはあり得ない」と言った。それがいとも簡単(?)に、おこった。(「金融恐慌」が果たした役割は大きいだろうが、それは別途で考えてみたい。)
「アメリカは、ブラックアメリカとホワイトアメリカの2つが存在している」と日高義樹の本などで学んだのは20年ほど前のことになる。たとえば、音楽の世界では(黒人音楽を白人社会が消費することは20世紀を通してずっと行なわれてきたが)「黒人音楽」「白人音楽」という明確な線引きが消えることはなかった(いまもある。)南部の田舎町にいけば、黒人住宅地と白人住宅地が明確に分かれている。この分断が、アメリカという国をひもとくひとつの重要なカギであるとずっと認識してきた。しかし時代は変化して「ブラックアメリカ」より「ヒスパニックアメリカ」のほうが議論されるようになり、ニューヨークのハーレムは「白人が多くなった」「観光客が増えた」とよく聞くようになった。ホワイトアメリカは80年代から目覚ましくブラックアメリカに親和的になっていったように見える。
オバマ新大統領の就任がその一つのピークであることは間違いない。これを期に人種差別や分断問題が完全に解決されることは当然ないだろうし、これが大きな免罪符として機能することももちろんあるだろう。けれども、ブラックアメリカが400年間夢に見続けたことが現実になったという意味で、本当に本当に喜ばしいことだと思う。
ところで、日本は大統領制度はないから、これほどドラマティックなことは起こらない。しかしもうすぐ政界再編。今年は自民党の時代がついに終焉する年。僕はずっと「激動の60年代」に"憧れて"きた。ベトナム反戦や公民権運動やブラックパワーの時代。不安ながらもまた「激動の時代」になってきた。どうやら「金融恐慌」が大きな掃除をしてくれているようにも見えるが、これからは恐怖を利用する輩もどんどんでてくるんじゃないか。