「SWINGについて」(その1)

「スイング」。これこそがブラックミュージック全般のリズムに関するもっとも重要なコンセプトだろうと思っています。一般的にはジャズ用語と思われがちですが、そんなことはなく、BLUES、R&B、SOUL、FUNK、そしてHIP HOPなどのブラックミュージック全般にスイング感覚があると思います。また、なければいけないんじゃないかと思っています。もしくは、その共通したフィーリングを「スイング」という言葉で表したいと思います。

「swing」という言葉が重要なキーワードとして使われ出したのは1920年代頃からのようです。それがいままでずっと残っています。しかしながら、現代の、例えばヒップホップのアーティストが音楽制作の現場で「おー!このビートはスイング してるぜ!」とか言っているのかというと、多分言ってないです。swingというのは、おそらく「お爺ちゃん用語」であり、もうヒップな言葉としては使わていないと思います。(「hip」だって言わないかもしれませんが。)

これとてスラングであり流行語です。しかしながら、いま僕がここで説明しようとしているリズムのフィーリングを表すのに、swingという言葉以上に適切な言葉が見つかりません。よってswingという言葉を使います。swingという言葉自体の歴史的な変遷などの検証を別稿にて行うつもりです。

「スウィング」は、日本の多くのミュージシャンの間では「ハネる」といいます。「ハネる」というのは、基本的に8分音符を3連符または3連符的に演奏する、という意味です。「タカタカタカタカ」ではなく「タッカタッカタッカタッカ」と演奏することです。(Ex.1)


●Ex.1
Ex1


手元の英和辞典で「swing」の項目をみると下記のようにあります。ちょっと長いですが書き出してみます。(自動詞の部分のみ。本来ならさらに他動詞と名詞の項目があります。)




自動詞 1 a
<ぶらさがったものが>(一定点を軸に前後にまたはぐるぐると規則正しく)揺れ動く、ぶらぶら揺れる b ぶらんこをする、ぶらんこに乗る c 行ったり来たりする、行き来する 2 a <ドアが>(ちょうつがいで)動く b <ドアが>(前後に)揺れて<...の状態に>なる 3 a ぶらさがる b ぶらさがりながら進む c ((口語)) 絞首刑になる 4 a ぐるりと回る、カーブを切る b <道などが>弧を描いて続く 5 a (体をゆすって)威勢よく行く[動く、進む] b (ものにつかまって)体を勢いよく動かす c さっと移る;始める 6(腕を振って)打つ;スイングする 7 ((口語))<バンドなどが>スイングを演奏する」

主に、1. 規則正しく揺れる、2. 弧を描く、という意味ということがわかります。(Ex.2)


●Ex.2
Ex2


「swing」という言葉をアメリカの黒人のミュージシャンが使っているからには、「この気持いいリズムのフィーリングはまるでブランコみたいだ」とか「まるで振り子みたいだなあ」もしくは「ぐいんと曲がっている道みたいだなあ」とか「バットを振る感覚に似てるなあ」というふうに、思った(もしくは現代でも思っている)からに違いないはずです。

逆に言えば、ブランコ(=振り子)みたいな感覚、もしくは/且つ、弧を描くような感覚を感じなければ、それは「スイング」とは呼べない、ということになるのではないでしょうか。

先 に述べたように日本では一般的に「スイング」は「ハネ」と訳されていますが、英語の辞書によると「跳ねる」という言葉は1回もでてきません。「ユレ」とでも翻訳されるべきです。「跳ね」なら「jump」とか「bounce」のはずです。僕らのスイングに対する理解・感覚は、かなり本来のそれとはズレがあるのではないだろうか?と思わずにはおれません。それでは、この「揺れ」とは実際に音楽の中でどう表れてくるものなのでしょうか...。(「その2」へつづく)
(2005.8.30)