LP『戦争と闘争』ライナーノーツ



  “ブラックミュージック”と一口に言っても様々なラベルを包含しています。「ブルーズ」「ゴスペル」「リズム&ブルーズ」「ジャズ」「ソウル」「ヒップホップ」などなど。よく「ソウルミュージック」と「ファンクミュージック」の違いは何か?ということが話題になります。もちろん線引きできるような類のイシューではありませんが、簡単に言ってしまえば、1968年以前のものが「ソウル」で、68〜74年までのものが「ファンク」と言えるのではないでしょうか? もし興味がおありならば、貴方のソウルレコード棚を1968年以前の産と以降産に仕切ってみてください。そこに明確な「何か」の違いがないでしょうか?
 1968年は、キング牧師が暗殺された年であり、メキシコオリンピックでスミス選手とカルロス選手がメダルを剥奪された年であり、ベトナムでは虐殺が激化した年であり、日本・フランスほかで大学紛争(闘争?)が全世界的な広がりを見せた年です。この頃から、アメリカ黒人の間では「アフロヘア」(アフリカの髪型、という意味です)に代表される「ナチュラル(ありのまま)」ファッションがメインストリームとなったようです。「黒色は美しい」という意識革命が音楽・ファッションを変えたのです。

<このアルバムについて>

このレコードは、2001年の年末に発売されたオーサカ=モノレールの2作目となるコンパクトディスク『ランブルとストラグル』から、既に発表されていた2枚のEP『彼女はダウン』と『自由になるさ』を省いた構成となっています。

A-1. INTRODUCTION
 最近のオーサカ=モノレールのショーのオープニングで演奏されるシークエンスが収録されています。速い4ビートにのって、さあさあ始まり始まり、というところでしょうか。

A-2. RUMBLE'N STRUGGLE
 「RUMBLE」とは「いざこざ」の意。『紛争と闘争』とでも訳すべきか。2001年はアメリカがアフガニスタンに対して空爆を行いました。「戦争反対」というスローガンに異論を唱える人はいませんが、「戦争を起こす」側(この場合はアメリカの権力中枢の人たちです)は、そんなことは百も承知しています。ですから彼らは巧妙に「大義名分」を用意してから戦争を始めます。ニューヨーク市ほかで発生したテロリズムがそれです。先の大戦では「真珠湾」だったし、ベトナム戦争では共産勢力から「ベトナムと合州国を救おう」というスローガンでした。いくらテロリズムが脅威であっても、なんの罪もない人民へ爆弾を浴びせる理由など何処にもありません(「ピンポイント攻撃」などは全くの茶番であると確信します)。諸手をあげて、空爆や、事実上の占領政策を行う大統領を支持するアメリカという国の驚くほど単純な恐ろしさを、今こそ改めて思うべきではないでしょうか。
 50年以上も「衛星国」となりさがっている日本という国に生きる私たちの立場を考えるとき、偉大な思想家・マルコムXや「自衛のための黒豹党」のアドヴァイスが有効だと思います。それは「セルフディフェンス」と「ユニオン」。つまり「自衛」と「団結」です。個人レヴェルの自衛が団結したとき「闘争」になります。僕たちは戦争に反対したい。しかし僕たちが投票して選んだはずの与党・自民党は果たして飼い犬の如くアメリカに媚びへつらい続けます。何故でしょうか? 犬の群のボスは犬でしかない、ということなのであります。繰り返して言いますが、戦争は常に「戦争を始めたらトクをする人間」が居るから起こるものであって、それを支えているのは「自衛」も「団結」もできないように教育されてきた国民や衛星国なのです。

A-3. STRANGE BUDDHA (KARATE)
 「空手」やクンフーは、ブラクスプロイテーション映画(1970年代前半に量産されたアメリカ黒人映画のこと。「BLACK<黒人>」と「EXPLOITATION FILM<娯楽映画>」の造語)でも、やたらと登場します。ジムケリー『黒帯ドラゴン』をはじめ『スーパーフライ』などなど。何故でしょうか。もしかしたら、1968年にキング牧師が亡くなってからは「人種統合」よりも「自衛」が重要視されるようになったことも関係あるやもしれません。ここではワウギターに牽引されてオルターナチヴファンキーとでも呼ぶべきサウンドが繰り広げられます。

B-1. THE CHASE
 映画に「チェイス」は付き物。ということでかどうかは判りませんが、これは追走劇を想わせるアップテンポ。後半は主人公(スィートバック?)が悪漢白人から逃げ切ったと見えて、緩やかなムードになってフルートが登場します。

B-2. JAM 1976
 「ファンク」は1968年に生まれて1973年頃には衰退していく「ナチュラル」フィーリングだと、冒頭述べました。1976年頃は人種混合的なディスコ音楽が芽をだしてきた時期です。シンプルなリズムになっていきますが、ここではディスコとファンクが内部でせめぎ合っているようなフィーリングが表現されていると伺えます。

B-3. CHANGES I WANNA MAKE
 このトランペットをフィーチュアしたスロー曲のタイトルは、映画『ゴッドファーザーPART II』のマイケル(2代目のドン)の台詞から拝借した、とのことです。この「家族」をテーマにした壮大な大河ドラマの一作目は72年に劇場公開され、さらに完成度を増した『II』は翌々年でした。

 それでは皆さん、いつか「日本人は美しい」と声高く叫ぶ日がくることを願いながら「スーパーヘヴィーファンキー」に共に習おうではありませんか!


(2002.3.12 栗須何故人)