スマホを握りしめて眠る少年

よい天気だが、マクドナルドの脇で、自転車を停めて、地べたに少年が眠っているのである。
人通り多い商店街で、昼間からスヤスヤと。疲れているのだろう。
マクドナルドの壁面にもたれかかり、道の脇に座り込んで、片手にスマホを握ったまま。よく眠っているが、なぜかスマホが落ちない。
眠りながら、黒い大きめの箱を、少年は両足で挟んでいる。箱に「UBER EATS」と書いてある。

   *   *   *

いま、新型コロナというウイルスが世界を襲っていて、僕たちは出来るかぎり外出や人との接触をさけて生活しています。それが約1ヶ月つづいたところ。さんざん云われている言葉は、「自粛」「自粛要請」「緊急事態宣言」「不要不急(であるかどうか)」「ステイホーム」など。
このブログを、数ヶ月後や数年後に読み返したとき、なにを思うのでしょう? 「あのときは大変だったな」「みんなで乗り越えたよね」であってほしい。とくに家にいる子供たちは大人になってから「あのときいっぱい遊んだよね」「懐かしいね」と言ってほしい。

でも、そういうわけにはいかないと多くが報じています。じっさいに命を落とす人があらわれ、これからもっと増えてゆくのかもしれません。そして、ひきおこされる「コロナショック」は壮大なものになると云われる。IMFは2020年の世界の経済成長がマイナス3パーセントになるだろうと予測を発表しました。これは1929年の大恐慌以来の数字なのだそうです。
大恐慌といえば、数年で各国のGDPが数十パーセントも下がるという凄まじいものです。
もちろん、マスコミというのものは往々にして大げさに書きたてて人の恐怖をあおる。
予測がはずれることを祈ります。しかし、いまは分かりません。

かつての世界恐慌は、すぐにヒトラーの台頭を生み、それは十年弱で世界第二次世界大戦へ突入した。
日本でも、都市に失業者があふれ、農村部にしわよせが行った。そこから兵隊がとられて中国へ行った。
政治が無策であったがため、人々は軍部を信じた。「日本は戦争は強いのだ。外国で暴れれば、農村の貧困を救うことになるのだ。」そういう物語を信じてしまった。

それでは、次に登場するヒトラーは、誰なのだ、どの国から登場するのだろう、という話になる。
次に登場する関東軍やら東条英機やらは、誰なのだ、どの組織から登場するのだ、という話になる。
でも、歴史は繰り返さない、と云われる。あれと同じことは起きない。ああいった、爆撃機が空をとんだり、戦車が野をかけるような、戦争はたぶん起きないのだろう。
しかし、人は失敗を繰り返す、と云われる。あのときと同じ間違いをおかす。でも、その間違が一体なにだったのか、それが分かりません。未来の予想は難しいことです。けれど、考えていかなくてはいけません。もしかしたら止めることは出来ないかもしれない。でも、考えたり行動したりすることは、やめてはいけないと思います。

短期的に何が発生するかは、容易にわかります。
さらなる不況がやってきて、いまの格差社会に拍車をかけるということです。
インターネットというモンスターが、非正規雇用を加速させています。
弱いものにはとことん厳しい世の中、強いものはどんどん太る世の中になってゆくのでしょう。

インターネットは、それこそ「双方向」です。
UBER EATSが便利だ、なんて言ったらダメだと思う。なぜならUBER EATSにとっては配達員さんが「便利」なのだから。
つまり、僕たちも配達員さんになるのです、もうすぐ。
アマゾンが便利だ、なんて言ったらダメだと思う。なぜ価格が安いのか、送料が無料なのか。
つまり、この前の記事でも書いたけれど、アマゾンの倉庫係さんや配達員さんたち、非正規雇用構造を出来る限り見えなくしているという見せかけの「便利」だからです。
スマホが便利だ、なんて言ったらオカシイと思う。スマホは、世界を操縦するリモコンスイッチのように見える(『鉄人28号』みたいな) けれど、それは逆で、スマホで企業からのリモートコントロール指令をうけているのは僕たちのほうなのだ。
グーグルが便利だ、なんて言ったらダメだと思う。なぜならグーグルは誰にとっても便利な存在なのだから、僕の敵にとってもグーグルは便利なはずだ。つまり、強い者はもっと強くなり、弱い者は相対的にもっと弱くなる。
それって、グーグルは強い者の味方であるということだ。つまり弱い者の敵ということになる。
何より、グーグルにとって僕たちこそ「便利」なのだ。

それなのに、インターネット企業は、弱い者の味方の顔をしている。
不況時代の救世主のように見せかけて、じつは格差社会をうんでいる張本人なのでしょう。
よーするに、不況下のドイツの救世主か、どこかの国の暴走する軍部そのもののようにしか見えません。

出前の配送指令をまつ少年には、家に帰って寝たほうがいいよ、と言うほかありません。
でも、もちろん、そんな事を言ったって・・・という話です。


2020年4月

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