平成は終わり。

時代について。
今年は平成が終わります。ほんとうは、「元号」なんて、あまり好ましくないただの制度・慣習であって、それによって何かが変わったり終わったり始まったりする筈もありません。それはそうなのですが、それでも、平成って一体なんだったんだとみんなが話題にしているので僕もかんがえを巡らせてしまいます。

平成とは、うしろばかりをみて前にすすめない時代、だったのではないかと思う。

昭和から平成にかわった1989年とは、ベルリンの壁がこわされ、ヤルタ会談で東西冷戦構造の終焉が宣言された年。歴史の大転換点だった。日本では、バブル崩壊まであと三年。

そこからの十年間、平成の幕開けごろ、つまり九十年代前半は、音楽の方面では六十年代や七十年代へのあこがれが支配的でした。僕はそういうものに影響をうけてバンドをつくりました。また、全世界的に隆盛したヒップホップはそういったものを再利用する音楽でした。

経済では、平成四年ごろにバブル崩壊したあと「失われた十年」。そこから立ち直ろうと、ああでもないこうでもないとやった時代でした。金融再編、住専、郵政民営化、派遣法改正、異次元の金融緩和。
結局、いまでは「失われた三十年」なんて言われています。いつまで失われたままなのだろう? 本当は、「失われた」は「迷える」の誤訳なのだけれど。言葉さえも、さまよっている。

僕自身は、高校二年生が平成元年でした。そのあと三十年間にわたって、いろんなことを体験してきたことになります。
学校に行ってバンドを結成したり、あちこちで演奏したり。
ちいさな会社をつくって色々やってみた。結婚もして家族もできた。
すべて平成でした。

それなのに、「自分は、昭和の人間。」というふうに認識しています。これは少しオカシイ。
自分は平成に生きてきた人間であるにも関わらず、平成に属すると云われてもしっくりきません。
むしろ、すこし誇らしく、昭和の人間であると思っているのです。
これは大問題です。つまり、自ら誇ることのできる時代を、平成生まれの人たちへ僕たち昭和生まれからプレゼントしてあげることができなかったことになります。

そんなことを思うと、数本の映画があたまに浮かびます。ものすごく似ている三本の映画について少し触れてみます。
『ALWAYS 三丁目の夕日』と『20世紀少年』と『クレヨンしんちゃん モーレツ!大人帝国の逆襲』です。いきなりですが。

『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005年)
これは大ヒットして続編が二本もつくられたようです。僕は一作目だけはみました。
僕はこの映画はよいと思わない。大嫌い。
なぜかというと、この映画は昭和三十年代というものにまったく向き合っていないから。郷愁で人々の興味をひく材料にしているだけ。
僕のカンにサワるのは、劇中、すべてのものが「古い」ということです。家具や畳や看板が、サビだらけだったり汚れていたりします。昭和三十年代当時に住んでいた家なら、家は建てたばかりで畳もあたらしいはずだし、看板はサビもなくピカピカのはず。なのに、この映画のなかではすべてがクスんでいて、すべてがカスんでいる。セピア色。これは本当に観客をバカにしている。
現代からみた「理想」の昭和、つまりノスタルジーに訴えるように都合良く描いているからです。
もちろん、娯楽作品である時代劇がウソをつくことは構わないのです。(「時代劇」はお侍さんモノだけでなく、いろいろな時代を含んで。)本来、時代劇のあるべきすがたとは、フィクションの体裁をとって現代を描くことです。
この作品はそれではない。この映画は、単に、「昔はよかったね」と言っている。
表面上は、戦後復興期・高度成長期のころの活気を、ふたたび日本に呼び起こそうというメッセージを発しているようにみえる。しかしそれはウソで、日本の未来を切り開いてゆく手がかりは、そこには無い。将来を切り開くためのヒントが昭和三十年代に隠されているかのような幻想をふりまきながら、じつのところはただのノスタルジーという麻薬。
そしてこの映画が描きだしていたもの、空虚なノスタルジーは半ば現実のものとなりました。安倍首相はこの映画を大絶賛して、オリンピックを再開催するはこびとなりました。ほんとうに、日本は、なにかのネジが何本かぬけている。
あげくのはてに万博まで決まった。つづく二作品は、万博の再開催を描いたものです。

『本格科学冒険漫画 20世紀少年』
これは面白かった。映画でなくてマンガのほう。僕は映画はキチンとはみていません。漫画は1999年(平成11年)連載開始。2007年(平成19年)連載終了。
ストーリーを要約すると、〈20世紀末に大人になった自分のところへ、幼少時の友人が襲いかかってくる〉というものです。つまり、大雑把にいえば「平成 vs 昭和」です。そして「昭和」が勝って「平成」は敗北します。おまけに「西暦」も敗北して、無茶苦茶になりますが最後はいちおうハッピーエンドです。
子供のころのつくり話が現実におこる、というストーリーなのですが、よく考えると、さらに「それさえも子供のころのつくり話」というのがミソです。主要な登場人物は全員が小学校・中学校のときに接点のある人になっています。たとえば、ロボットを開発する科学者は「家業の酒屋の配達先の大学教授」。悪の帝国を取り仕切っているのは「小学校の前にいた行商のおじさんとその愛人」というふうに。ちなみに、犯人をつきとめる伝説の刑事は「僕の姪の義理の祖父」です。たぶん、そういうことでしょう。
当時の子供が考えたことなのです。攻撃される都市がロンドンだったりサンフランシスコだったりする(近所の喫茶店の名前)のはそのためです。また、細菌をばらまくロボットのなかが空洞になっているのもそのためです。曰く、「だって、本当に子供が考えたことなんだから・・・。」作品のタイトルが「本格科学冒険漫画」と銘打たれているのも、つまりは「本当の科学漫画ではない、こども向け」という意味なのです。
つまり、これは「平成から見た昭和の話し」ではなく、「昭和からみた平成の話し」です。これがノスタルジーという批判をかわすために使われている妙なロジックです。
うわべの主要テーマは「子供のころに思い描いていたような強い自分になれるか」です。「平成のじぶん vs 昭和のじぶん」です。その意味では、ものすごく簡単に言うと浦沢直樹氏のミッドライフクライシスです。それを、これでもかというほど壮大に描いて笑い飛ばそうとしているのでしょう。その気分は僕も共感できるものです。
この漫画はとても面白いのですが、ダメな点は、未来のことを描いている漫画なのに、未来への展望が一切ないことです。唯一、未来への希望の例示として登場するのは「ボウリングブームの再来」。これには、力なく笑うしかありませんでした。

『クレヨンしんちゃん モーレツ!大人帝国の逆襲』(2001年)
これは名作ですが、子供向けの映画なのでご覧になられていない人は多いかもしれません。
僕のような心あたりある人にとっては、この映画をみるとグウの音もでませんので、ぜひ観て下さい。
昭和四十五年の大阪万博や、怪獣があばれるテレビ番組の思い出にひたるヒロシ(お父さん)を、幼稚園児のしんちゃんが叱る、という話しです。なぜなら、麻薬におぼれるかように、お父さんやお母さんが子供のころの思い出にひたってばかりいると、子供たちは何を指標に生きて行けばよいのか分からなくなってしまうからです。親の世代は子供たちに、「今」や「未来」を提示しなくてはならないのです。
この映画では、大人たちは、カリスマ指導者(なぜかジョンレノンとオノヨーコ)のもとで洗脳されていて、なつかしい昭和30年代や40年代が再現されたテーマパークのようなところに暮らしています。そこは大人だけのユートピアで、子供には居場所はありません。子供はテーマパークの外に居て、大人の帰りをまっています。
映画の最後には、しんちゃんがジョンレノンに引導を渡します。ものすごい名作ですから是非みてください。


クレヨンしんちゃんの映画がすべてを語ってくれているので、何も書くことがなくなってしまうのですが、とにかく、そうやって後ろ(昭和)をみているあいだに、次に何をしたらよいか分からなくなってしまって、いろんなものが崩れ去っていったのが平成だったと思います。
日本をぶっ壊したもの。バブル崩壊、新党ブーム、小選挙区制、小泉政権、安倍政権。日本は、フランスのマクロンやアメリカのトランプより数年早くに極右政権が誕生した。
大阪の、たかじん、読売テレビ、維新。
建前トークは良くないこととされて、「ぶっちゃけトーク」がもてはやされた。「ぶっちゃけ」というのは百害あって一利もない。建前が成り立たない世界は恐ろしい。倫理が機能しない。弱い人が戦々恐々とする社会だ。
昭和の時代にみんながつくった、ないがしろにしてはいけない「理想」「建前」がどんどん壊れていった。
じつのところは、議会制民主主義による国家統治なんて、ものすごく高度なことであって、みんなで建前を共有しないと成り立たないものだった。
平成とはそんな時代だったと思う。

なんの歯止めもきかないまま暴走をつづける安倍政権なるものが日本を壊しまくったあげく、当然、自民党だって自壊してゆくでしょう。そのあと残された僕たちは、壊されてしまった日本をどうするか。またあたらしい未来を提示してゆかなくてはいけない。
新元号なんて本当にどうでもよいことだが、とにかく、あたらしい時代には、振り返ることをやめて、未来を切り開かないといけない。すくなくとも模索を開始せねばならない。

僕は、要素やスタイルとして六十年代の音楽を扱うことはやめないけれど、ノスタルジーという要素は排除しなくてはならないし、着地点は未来を切り開くようなことがやりたい。

2019年4月

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