2015年9月18日の日記(計4回)その4:翌朝

 朝4時すぎ、僕は、国会正門前から離れて国会の裏側、議員会館のほうへ移動しました。Tさんとお会いするため。
 歩く途中で、どんどん明るくなりました。「総がかり行動」は解散となった模様。いくつかの団体がまだ残っていた。
 Tさんはちょうど片づけを始めたところだった。KTさんもいらっしゃった。昼からぶっ通しで一日中コールを続けていたらしい。目が真っ赤で、もうヌケガラみたいに疲れ果てておられた。

 それから、Tさんと1時間ほど立ち話。興味深い話をたくさんしていただいた。そのあいだに、始発の時間がきて、どんどん人が帰っていく。六時すぎには、完全に明るくなって、人も全くいなくなってしまいました。
 別れ際にTさんがおっしゃった。「国会前に12万人も集まって、それでもこの新しい安保法制を止めることはできなかった。やっぱり、数万人でもダメだ。もっともっと大きくしていかないといけない。ましてや数百やら数千ではまったく足らない。いろんな<風>を起こしていかないと、市民運動を大きくして勝利をかちとっていくことは難しい」

 それから、(僕のような、いわゆる活動家ではない)ミュージシャンには、新しい風を起こしてくれるよう期待をもっている、という意味のことをおっしゃった。

 お別れをして、参議院議員会館前から永田町駅出口まで、ほんの150メートルほどを歩きました。
 もう辺りにはたったの一人も居ません。お巡りさんが数名いるだけ。朝はまだ静かで肌寒いが、今日はいい天気のようで、もう陽がまぶしい。
 つい数時間前まで、ここで、戦後70年における大転換点といってもよい抗争が行われて、数万人が目に涙をためて必死に声をふりしぼっていたのが嘘みたいです。みんな帰っちゃった。

 ああ、あれだ。<革命の夜、いつもの朝>・・・このフレーズが本当にピッタリ。初めて体験した。
 正確にいえば、肝心の<革命>を起こせなかったわけで、やっぱり違います。でも、<革命>は今からみんなで起こすのだから、まあいいか。

 地下鉄に乗って、車をとめておいた青山一丁目まで。そこから運転して自宅へ。土曜日の朝7時だから交通量は多くありません。渋谷あたりもスイスイ。
 運転しながら、昨晩のことや、この一週間のこと、この数ヶ月のことが頭をめぐりました。(これだけ盛り上がったのに、やっぱり安保法は成立した・・・。みんな分かっていたことだけど。)

 12万人が国会前に来ても、全国で100万人規模のデモをやっても、ストップできませんでした。悪の組織はスイッチが入ると、もう誰にも止められなくなります。あらためて、敵の恐ろしさ、巨大さを想いました。
 (日本はこのまま、「武器商人の国」になっていくのかな? アメリカと同じ「経済的徴兵制」になっていくのかな?)
 (自衛隊の若者が、アメリカ兵と一緒になって世界中で殺したり殺されたりするのかな?)
 そして、数十年後には、行きつく先が、1945年のような民間人もふくめた大殺戮だとしても、もはや違和感をおぼえません。

 そして自分の小さな娘たちのことを考えた。
 (・・・ぜったい大丈夫だぞ、なにも心配することないぞ。いざとなったらパパが外国でもどこでも連れて行ってやるからな。何の心配事もなく成長するんだぞ・・・!)
 そんなことを考えていたら、同時に、自分の無力さもよく分かってきて、涙があふれてきた。

 こんなことになるなんて。二十数年前にはもう分かっていたようなことなのに。いままで何も出来なかった。何もしなかった。何故だろう?

 7時半頃、家にたどりついて朝食をとり、アパートのベランダから外を眺めたら、まるで、この一週間 何事も無かったかのよう。
 驚くほどいい天気で、年配者は犬の散歩。
 
 そこでようやく、僕は理解したのでした。山本太郎議員や、SEALDsの人達が言っていたことを深く理解しました。

 涙を流したり、嘆いたりしていてはダメだ。感傷的になって、これを<安保闘争に敗れた日>なんて美化するのはバカバカしいことだ。
 今後やらなければならないことは、もう明白です。戦争法を廃棄すること。さらには、辺野古基地問題、原発問題、経済問題、差別問題、その他たくさんの課題があって、とにかく、「正しいか間違っているか」とか「得か損か」とか「カッコいいか悪いか」とか「誰が何と言っているか」ではなく、弱い者の側から物事を見て判断して、微力ながらも発言したり行動したりしていくしかないのだ。
 終わりは無いのだから、明るく朗らかに行くほか道は無い。

 その土曜日と日曜日は、自分でも理由は分からないが、思い出すたびに涙がでそうになったが、泣いたって良いことは一つも無いと考え、やっぱり、明るい光のさす方向へ導いてくれた各氏に深く尊敬の念を抱いた。
 これからは、行動あるのみ、でいこう。 (おわり)

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