ワッツタックスのDVD

音楽と関係ある度:★★★★☆


すこし久しぶりに映画『ワッツタックス』を観た。これに勝るものはないとつくづく思う。
しかし、この2003年版の日本向けDVDの字幕はいただけなかった。世紀の傑作なのに。

言うまでもなく、これはマイノリティによるマイノリティのための映画、それも一番ハードコアの映画だから、字幕制作がかなり「難しい」ことは当然で、苦労のあとは伺えるのですが、やはり難しいところがとばされていたり、誤訳だったりして苦言を呈したくなる。90年代に「黒人音楽専門レーベル」であるP-VINEからVHSが発売されていて、なかなかの翻訳がついていたのに、配給会社は何故そちらを買い取らなかったか。プライドかシガラミか、それとも知らなかったか。
それから、歌詞に翻訳がついていないことも本当に残念です。

たとえば、本編の一番最初のセリフ、リチャード・プライアーの言葉です。

 All of us have something to say, but some are never heard.
 (DVD字幕:誰にも言い分はある だが 聞かない奴も)

「聞かない奴も」というのがあまりに軽くて納得いかないなあ...。原文は「誰だって何かしら言いたいことがある。なのに、その声がまったく顧みられない人たちがいる」と言っています。このイベント(映画)にはそんな「世界に届くことのない声」が詰まっているのだ、とプライアーが宣言している重要なセリフ。
もっと突っ込んで、「俺たちの声は 世間に届かない」とか「黒人の言い分は 無視されてきた」などにしても良いくらいのところだと思う。ただし直接的すぎると説得力に欠けるかもしれないから、「俺たちの声は〝届かぬ声〟だ」などでも良かったかもしれない。

他のいくつかの映画もそうなのだけれど、特に『ワッツタックス』は一番大事な映画です。字幕翻訳はよいものを後世に残せれたらいいと思う。



2016年1月

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