2000年1月アーカイブ

基礎をかためる英語講義:第三回(全15回)子音
2023年9月公開


本日は、全15回講義の第三回目となります。
今日は子音をまなびたいと思います。
本日で、子音のすべてを網羅してしまいましょう。

子音はいったいいくつあるのでしょうか?―――ぜんぶで24個です。

母音は前回やりましたので、これですべての母音とすべての子音を知ったことになります。
これにて〈音節〉をつくることができます。
しつこいようですが、英語の本質とは、

 子音 + 母音 + 子音 = 音節
 ひとつの音節 → ひとつの意味
 ひとつの意味 → ひとつの単語

たとえば、
 子音 [b] + 母音 [æ] + 子音 [g] = 音節 [bæg]
 ひとつの音節 [bæg] → ひとつの意味(かばん)
 ひとつの意味(かばん) → ひとつの単語「bag」

これが英語の出発地点となるわけです。

本講義、第三回の結論をさきにお伝えしましょう。
それは三つあります。

・英語では、子音だけで存在できる。(日本語では子音は単独で存在できません。)
・英語とは子音がつよい、母音がよわい言語である。
・英語の子音はぜんぶで24個。(日本語話者にとって難しいのはわずか数個。)

ということです。

難しいのは母音のほうです。子音の発音はそれほど難しくありません。
「LとR」とか、ほんの二、三のことを習得したらよいだけです。

ただし、「子音を強く発音する」というのがちょっとコツや慣れが必要です。
なんてったって、子音だけで存在できるんですから、日本語からすると逆立ちしているような世界です。

この「子音を強く、母音を弱く発音する」をすぐ出来る人はほとんどいません。
これができたら黒帯レベルです。
今後ゆっくりできるようになったらいいだけで、本日のところは、「そういうもんだ」との知識を得たと思ってください。
(やらない、という意味ではありません。あらためて第五講義でやります。)

それでは子音を学んで参りましょう。


[1] 子音をまなぶ準備 (アルファベットの考察)

突然ですが、せっかく子音の勉強をするので「アルファベット」のおさらいを平行してすすめてみたいと思います。
そうすれば、子音の何たるかが分かるだろうと思うのです。

「アルファベット」は下記の26文字のことです。
これは誰でも知っているとおりです。

(大文字)
A, B, C, D, E, F, G, H, I, J, K, L, M, N, O, P, Q, R, S, T, U, V, W, X, Y, Z
(小文字)
a, b, c, d, e, f, g, h, i, j, k, l, m, n, o, p, q, r, s, t, u, v, w, x, y, z

ちなみに、「アルファ」というのはギリシャ文字の「α」のことです。
「ベット」というのは「ベータ」すなわち、ギリシャ文字の「β」のことです。
「A」の起源が「α」で、「B」の起源は「β」です。
ですから「アルファやベータ」。すなわち「ギリシャ文字」ということですね。
要するに、「文字」ということでしょう。

アルファベットをつかっているのは英語だけではないことに注意してください。
フランス語も、スペイン語も、ドイツ語も、イタリア語も、オランダ語も、ベルギー語も、スウェーデン語も、みんなアルファベットを使っています。
さらに、ロシア語も、ポーランド語も、ブルガリア語も、見慣れない文字が増えますが、やはりアルファベットを使っています。
・・・ということは、アルファベットをやったからと言って、英語ができるようにはならないわけです。

日本語を学ぶ場合には、ずいぶん勝手がちがいます。
「あいうえお・・・」の五十音表をまなぶだけで、発音は九割がたオシマイで、文字も基礎が出来たことになります。
山にたとえるなら、五十音表だけですでに日本語の六合目か七合目くらいまで登ったことになります。

英語で、日本語の五十音表に相当するものは、アルファベットではありません。
であれば、アルファベットとはそもそもなんぞや、ということになります。
アルファベットとは、すなわち、「母音または子音をあらわすために使う文字(記号)」なわけです。
たとえば、「a」は、15個あるうちの母音 [eɪ] または [æ] などをあらわします。
「b」は、24個ある子音のひとつ [b] をあらわします。
つまり、母音用のアルファベットと子音用のアルファベットがあるわけです。

それでは子音をあらわすアルファベットをみてゆきましょう。
かならず声にだしてすすんでください。

a(エイ), b(ビー), c(スィー), d(ディー), e(イー), f(エフ), g(ジー), h(エイチ), i(アイ), j(ジェイ), k(ケイ), l(エル), m(エム), n(エヌ), o(オウ), p(ピー), q(キュー), r(アール), s(エス), t(ティー), u(ユー), v(ヴィー), w(ダブル・ユー), x(エクス), y(ワイ), z(ズィー)

これを声にだしましたら、あることに気が付きます。
アルファベットの前半は、ほとんどが「イー」でおわっていることです。
「ビー」とか「ジー」とかです。それが、八つありますね。

あともうひとつ、グループ分けできることに気付くと思います。
そうです、最初に「エ」がくるグループがけっこうありますね。
「エス」とか「エム」とかです。それが、六つあります。

さらにもうすこしグループ分けができます。お分かりになるでしょうか。
そうです「エイ」でおわるものがあります。
「ジェイ」と「ケイ」の二つだけですが。

「イーで終わる子音字」と「エで始まる子音字」と「エイで終わる子音字」で色わけをしました。
発音記号を付しました。もう一度声にだして読んでみてください。

a [eɪ] , b [bi:] , c [si:] , d [di:] , e [i:] , f [ef] , g [dʒiː] , h [eɪtʃ] , i [aɪ] , j [dʒeɪ] , k [keɪ] , l [el] , m [em] , n [en] , o [oʊ] , p [pi:] , q [kju:] , r [ar], s [es] , t [ti:] , u [ju:] , v [vi:] ,  w [dʌbl-ju:] ,  x [eks] ,  y [wɑɪ] ,  z [zi:] , 

三つの分類ごとに並び替えてみました。ふたたび、声に出してみてください。

b [bi:] , c [si:] , d [di:] , g [dʒiː] , p [pi:] , t [ti:] , v [vi:] , z [zi:]
f [ef] , l [el] , m [em] , n [en] , s [es] , x [eks] ,
j [dʒeɪ] , k [keɪ] 

これら子音字は、おまけの母音(「イー」とか「エ」とか「エイ」の三種類)をくっつけて読むようになっています。
きっと、英語の人たちだって、子音だけだと読みづらいからそうしているのでしょうね。


[2] アルファベット1字であらわされる子音

さあ、いよいよ、余分な母音の部分すなわち「イー」や「エ」や「エイ」を取り除いて、子音だけにする作業にとりかかりましょう。
母音をのぞいて、下記を声にだしてみてください。

下記から[i:]をとりのぞいてみてください。
b [bi:] , c [si:] , d [di:] , g [dʒiː] , p [pi:] , t [ti:] , v [vi:] , z [zi:]

下記から[e]をとりのぞいててください。
f [ef] , l [el] , m [em] , n [en] , s [es] , x [eks] ,

下記から[eɪ]をとりのぞいてみてください。
j [dʒeɪ] , k [keɪ]

どうですか、できましたか?
すこし、頭がこんがらがるかもしれません。
しかし、すぐ慣れますから数回トライしてみてください。

「b」(ビー)から「イー」という母音をとりのぞくと、カタカナで書けば「ブ!」というようなかんじです。
「c」(スィー)から「イー」という母音をとりのぞくと、カタカナで書けば「ス!」というようなかんじです。
「d」は「ドュ!」みたいなかんじ、「g」なら「ジュ!」みたいなかんじです。
「p」は「プ!」みたいな、「t」は「トゥ!」みたいな。
「v」は「ヴ!」みたいな、「z」は「ズ!」みたいな。

「m」は「マ!」みたいな、「n」は「ナ!」みたいなかんじです。
「s」は「ス!」みたいな、「j」は「ジュ!」みたいな。
「k」は「ク!」みたいなかんじです。

「f」と「l」は、カタカナでかくのが困難なのでかんべんしてください。

はい、いかがでしょうか。
だいたいで良いのです。すぐに上手にやれるようになる必要はありません。
おいおい、英語というものに慣れていけば、出来るようになります。
いまは、「しくみ」を理解していただくことが大事です。
僕の云う「しくみ」とは、

・アルファベットの子音字は、子音とおまけの母音で読むことになっている。
・つまり、おまけの母音をとりのぞけば子音になる。
・英語話者は、子音だけで発音できるものである。

ということです。

ここまでで15個ありました。
ただし、お気づきのことと思いますが、「c」と「s」は同じです。
「g」と「j」も同じ音(おと)になります。
ですから、じっさいには13個です。
ということは、これで半分まできましたね。
残りは12個です。

あ、ちょっと大事なもの、「L(エル)」の発音のことを忘れていました。
「L(エル)」の発音について説明します。
このアルファベット「エル」は発音記号で書きますと、[el]です。

まず「エ〜」と言います。すこし伸ばしておいてください。
それを言い終わるときに、しめくくりとして、舌を、上の前歯のうしろにあててください。
前歯の下でもかまいません。
その状態から、だらんと全身の力を完全にぬききってください。
全身の力をぬききると、声がでなくなりますから、そのまま音をおえてください。
そうすると「エ〜ル」と言っているように聞こえます。(そのように聞こえるだけです。)
これがアルファベット「L」の正体です。
発音記号で書きますと[el]です。

つづいて、逆をやってみましょう。
こんどは、[el]ではなく[li:]を発音してみましょう。
さきほどの音(おと)からスタートします。
舌を上の前歯のうしろに置いたところからスタートして、「イー」といいながら舌をはなします。そうすると「リィー」と言っているように聞こえます。

母音[ e ] + 子音[ l ]という組み合わせと、子音[ l ] + 母音[ i: ]が言えるようになれば、これでだいたい、子音 [l]の正体がみえたと思います。

あとはだいたいやさしいと思います。
ちなみに、「f」や「v」の音は、前歯で下唇を噛む、という教えかたがありますが、それはやり過ぎだと思います。前歯が下唇のうら側にそっとあたるくらい、がよいと思います。

ちょっと練習しておきましょう。
子音が同じであることを自分の耳で理解してください。
自分の声を、自分の耳で、しっかり聴いてみてください。
子音をしっかり聴いてください。母音ではなく、子音です。
まずは、母音「エイ」と「オウ」をつかってみましょう。

b +  [eɪ] + k → 焼くという意味
b +  [eɪ] + s → 基地という意味(野球でいう「塁」)
b +  [oʊ] + t → 小舟という意味
b +  [oʊ] + l → 鉢状のものという意味
s +  [eɪ] + v → 保存する、残す、という意味
s +  [eɪ] + f → 安全」という意味
s +  [oʊ] + p → 「せっけん」という意味
s +  [oʊ] + l → 「魂」という意味
d +  [eɪ] + t → 「日付」という意味
d +  [eɪ] + v → 男の名。Davidの短縮形
d +  [oʊ] + p → 麻薬という意味
d +  [oʊ] + (うしろ子音なし) → こね粉、パン生地(ドーナツの生地)のこと
f +  [eɪ] + t → 運命という意味
f +  [eɪ] + k → ニセモノという意味
f +  [oʊ] + m → 泡(あわ)という意味
f +  [oʊ] + k → 人々、国民、という意味
j [dʒ] +  [eɪ] + l → 「牢獄」という意味
j [dʒ] +  [eɪ] + k → 男の名。Jacobの短縮形
j [dʒ] +  [oʊ] + k → 冗談、笑い話、という意味
j [dʒ] +  [oʊ] + (うしろ子音なし) → 男の名。Josephの短縮形
k +  [eɪ] + k → 洋菓子という意味
k +  [eɪ] + s → 容れ物、案件という意味
k +  [oʊ] + l → 石炭という意味
k +  [oʊ] + t → 防寒用上着という意味
l +  [eɪ] + k → 湖という意味
l +  [eɪ] + n → 小道、車線という意味
l +  [oʊ] + n → 借り入れ、という意味
l +  [oʊ] + f → (パンなどの)ひとかたまり、一斤という意味
m +  [eɪ] + l → 手紙という意味
m +  [eɪ] + k → つくる、という意味
m +  [oʊ] + d → 様式、方法、流行、という意味
m +  [oʊ] + n → 悲しみのうめき声、という意味
n +  [eɪ] + l → 爪(つめ)という意味
n +  [eɪ] + k → 裸にする、という意味
n +  [oʊ] + t → みじかいメモという意味
n +  [oʊ] + z → 鼻(はな)という意味
p +  [eɪ] + s → 歩調、速さ、という意味
p +  [eɪ] + n → 痛みという意味
p +  [oʊ] + l → さお、立て棒、という意味
p +  [oʊ] + p → 法王(ほうおう)という意味
r +  [eɪ] + s → 競争、または「人種」という意味
r +  [eɪ] + n → 雨という意味
r +  [oʊ] + l → 役割という意味
r +  [oʊ] + p → 編み込んで強くした紐(ひも)という意味
t +  [eɪ] + k → 取る、手につかむ、という意味
t +  [eɪ] + l → 物語(ものがたり)という意味
t +  [oʊ] + n → 音色、声色(こわいろ)という意味
t +  [oʊ] + s + t → 焼いたパンのスライスのこと
v +  [eɪ] + n → 無駄という意味
v +  [eɪ] + s → 花瓶という意味
v +  [oʊ] + t → 投票する、という意味
v +  [oʊ] + l + t → 電圧の単位のこと

はい。ご苦労様です!
すこし疲れたかもしれません。
でも、何度も同じことを言っていますが、とにかく一音節の単語に慣れていただくことが、何よりも大切なんです。
あとでしっかり効果があらわれると思います。

ここまで、疲れたかもしれませんね。ゆっくり休憩をとってから、明日にでもつづきをやってください。


[3] LとRについて

それではつづきに参りましょう。
日本で大問題とされている、この件について説明しますので、よく読んでください。

まず肝心なことですが、「LとRは、似ても似つかぬ子音である」ということです。
英語を話す人は、たいてい、「どこが似ているのか、さっぱりわからない」と言います。 例えば「TとDとか、FとVとか、なら似ている。でもLとRはまったく似ていない」と、英語を話す人は考えています。
LとRがまぎらわしいと感じるのは日本語を話す人だけの話です。

なぜ紛らわしいのかというと、両方とも日本語にあてはめると「ラ行」に聞こえるからです。
ですから、日本語の五十音にあてはめて聴くのをやめたらいいのですが、それを僕は「脱獄」と呼んでいますが、そんなに簡単なことではありません。
ではどうすればよいかと言いますと、「L」とは何か、と、「R」とは何か、を知ることです。これが唯一の解決法です。
「L」と「R」の違い、を考えてもたどりつきません。
そもそも共通性さえ無いからです。
言葉をかえていえば、24個あるうちの一つとしての「L」を言えるようになり、また、24個あるうちの一つとしての「R」を言えるようになれば、必然的に同じ音として聞こえなくなります。 「L」については説明しました。
いまから「R」について説明します。

いまから四通りの説明をします。そのどれもが、[r] の正体をあなたに伝えようとする試みです。
四つとも試してみて、本当の [r] とは何か、自分で言えるようになり、その自分の声の音を聴いて、理解してください。

アルファベットの子音字「R」(アール)は、発音記号で書きますと [ɑr] です。 [ɑ:r] と書いてもよいです。
子音 [r] の正体は、このうしろの子音のことです。
最初の「アー」は、さきほどからの子音字と同様、アルファベットを読む際の、ただのオマケです。

一つ目の説明。
まず「ア〜」と言います。すこし伸ばしておいてください。
それを言い終わるときに、しめくくりとして、舌を、できるかぎり、口の奥のほう(つまり喉のほう)へ押し込めて(引っ込めて)ください。
舌の先端はどこにもつきません。空中です。
そのまま、全身の力をぬききって、音をおえてください。
そうすると「ア〜ル」と言っているように聞こえます。(聞こえるだけです。) これがアルファベット「R」の正体です。

つぎに、逆をやってみてください。
舌を奥のほうにひっこめたところからスタートして、ゆっくり舌をまえのほうに戻しながら、「イー」と言いましたら、無理に日本語で書くなら「ウィー」とか「リィー」というかんじの音になると思います。それが [ri:] です。
[ɑ:r] と [ri:] ができたら、 [r] はもうわかったも同然だとおもいます。

二つ目の説明。
子音 [r] とは、犬がうなるのを鳴き真似する声とかんがえればよい、というのが僕の英語の先生(上川先生)の教えです。僕も、「なるほどそうだ!」と思いました。
舌を奥のほうへおしやり、喉をゴロゴロならすようにして音をだしてください。それが[r]です。

三つ目の説明。
僕の個人的な体験をおつたえします。参考になればさいわいです。
僕は高校生のときに一年すごしたカナダのホストファミリーのお母さん(ポーランド移民)に「r」と「l」のちがいを教えてとお願いしましたら、「l」の発音は、舌を口のなかのうえ全体にびたっとあてて(舌の先端は前歯のうらにあたる)、そこから離しながら音をだすと。「r」の発音は、舌をどこにもあてずに、奥のほうへやると。
これで言えるようになり、言えるようになりましたら、だいたい聴くこともできるようになりました。 (これは1つ目の説明とだいたい同じ。)

四つ目の説明。
これは僕が大学生のときに自分でかんがえた「r」の発音方法です。
バカみたいな方法ですが、効果絶大で、30年以上実践している方法なので紹介します。 すでに母音の講義で紹介したものです。
「コメディアンの関根勤がジャイアント馬場のモノマネをするときの声をだす。」
これが子音「r」です。
(ということは、僕の説明によれば、驚くべき事に、母音の [ ɝ ]と子音の[r]は同じ音ということになります。僕はそうかんがえています。)

はい、もうすこしで今日の講義はおわりですから、もうすこし頑張ってください。


[5] 子音のこり

さあ、だいたい13個ほど練習しましたので、のこり11個ほどのこっています。のこりを
一気にやって、今日はおわりにしたいと思います。

何度も言いますが、舌の位置がどうのこうの、口の形がどうのこうの、というのはおすすめしません。それで英語ができるようになるのであれば、いまごろ、日本の人のほとんどがしっかり発音できるようになっているはずです。
そのやりかたで明治開国以来、百年経ってもダメなんですから、そろそろ、その方法はあきらめるべきです。
(さきほどの「L」と「R」のように、どうしても必要なときだけ、その方法で。)

有声子音とか無声子音とか、その話もしません。
乱暴なことを書くと、どこかの方面から叱られるかもしれませんが、そんなことを考えたって、子音はわからないと思うのです。

さらに極端なことを言いますと、音声ファイルを聴いても、あまり効果がないと思います。
どうせそのとおりに発音できませんし、耳なんてものはいい加減なものです。
(たとえば、ヤカンの音を真似しろとか、ライオンの鳴きまねをしろ、といわれても出来ませんよね。それと同じです。)

ではどういう方法を僕は提唱しているのかと言いますと、下記のようなことです。

(1)会話や映画などで、英語話者の声を聴くこと。(当然ですが。)
(2)ぜんぶで子音がいくつあるか、を知る。それ以外の子音は存在しない。
(3)舌の位置や口のかたちは必要最低限、ほんの数個、とくに難しいものだけ学ぶ。
(4)子音の発音そのものはそれほどむずかしくないのであまり気にしすぎないこと。

むずかしいのは、最初に言いましたとおり、子音をはっきり発音し、母音はやさしく発音するということです。母音が中心の言語である日本語をはなすわれわれにとって至難の業です。
英語は子音中心の言語なのです。
これのコツは第五講義でやります。

また前置きがながくなってしまいました。すみません。
のこりの子音は下記です。
その子音が前またはうしろにくる一音節の単語をあげましたので、しっかり声にだしてください。

[w] watch [wɑtʃ], what [wɑt], why [wɑɪ], we [wi:], wheel [wi:l], queen [kwi:n], one [wʌn]
[g] go [goʊ], game [geɪm], gate [geɪt], Greece [gri:s], big [big], bag [bæg]
[θ] threat [θret], throw [θroʊ], teeth [ti:θ], month [mʌnθ]
[ð] though [ðoʊ], this [ðis], they [ðeɪ], with [wið]
[ʃ] she [ʃi:], sheep [ʃi:p], bush [bʌʃ]
[tʃ] catch [kætʃ], patch [pætʃ], chick [tʃɪk], chess [tʃes]
[r] run [rʌn], reel [ri:l], rice [rɑɪs], tree [tri:], street [stri:t], strike [strɑɪk]
[j] you [ju:], use [ju:z], new [nju:], view [vju:], New York [nju:jɔːk]または[nju:jɔrk]
[ŋ] sing [siŋ], wing [wiŋ], tongue [tʌŋ]
[h] heart [hɑ:t]または[hɑrt], hit [hit], heal [hi:l], who [hu:], hotel [hoʊ-tel]

舌の位置の説明はあまりしたくありませんので、とばしちゃいます。 ごめんなさい。
1つだけ。[θ]と[ð]は、舌を上と下の歯で噛む、という説明がありますが、それはやりすぎだと思います。舌の先端を前歯の下にあててればこの音をつくることができます。そこから舌を離さずに子音を伸ばします。

うーん、[ʒ] と [dʒ] がちがう、という話もあるのですが、学習のうえではほとんど不要でしょう。
この二つを聞き分ける、言い分けることができなくても、当面のあいだ英語をつかううえで問題にならないと思います。(その理由は、音がほとんど同じであることと、[ʒ] をふくむ単語がとても少ないからです。)
調べたい人は何かの本で読んでください。

あと、cars [kɑ:z](車)とcards [kɑ:dz](カード)の発音が違う、という話があるのですが、この話も不要でしょう。
もしこれが英語話者にとって聞き取りができるというのでしたら(できるらしい)、まあはっきり言いまして、京都弁と大阪弁を聞き分けられるかどうか(関西人にはかんたんなこと)ようなもの・・・ということで、気にしないでいいでしょう。僕は気にしていません。

そういう話がある、というくらいだけ覚えておいて、いつか誰かに質問してみたらよい、くらいでオーケー(オウケイ)だと思います。

はい、これで子音はおしまい!
さいごにもういちど、一覧表をしめしておきます。
(*印のついたものだけ二音節、あとは一音節です。)

①[p] pet, top
②[b] bat, Bob
③[m] mat, palm
④[w] watch, what, why, we, wheel
⑤[f] front, leaf
⑥[v] vase, save
⑦[θ] threat, throw, teeth, month
⑧[ð] though, this, they, with
⑨[t] tape, teeth, treat, cut, ghost
⑩[d] date, dime, dream, odd, crowd
⑪[s] six, cent, state, street, coast
⑫[z] zoo, zip, zoom, dozen, cars
⑬[n] nice, new, night, win
⑭[l] leap, lip, stole, coal
⑮[r] run, reel, rice, tree, street
⑯[ʃ] she, sheep, bush
⑰[ʒ] beige, measure*, Asia*
⑱[tʃ] catch, patch, chick, chess
⑲[dʒ] just, Jane, badge, judge
⑳[j] you, use, new, view, New York
㉑[k] kick, clock, coat, cake, cast
㉒[g] go, game, gate, Greece, bag
㉓[ŋ] sing, wing, tongue
㉔[h] heart, hit, heal, who

母音と子音がおわりましたので、次回講義は、三段跳び方式で一気にいきたいと思います。
1音節がわかったと思いますので、2音節や3音節の単語、そして一気に「文のよみかた」までまいります。

そして、第四回講義がおわりましたら、第五回講義はいよいよ「リスニング」です。リスニングがすべて、といってもいいです。

たとえば、自分の好きなアーティストのインタビュー動画を、本人の言葉として耳で感じることができるようになるわけです。こんな楽しいことはありません。
自分の好きな映画を字幕を見ないで、セリフとして音として(英語の字幕もなしで)理解できれば、こんな楽しいことはないわけです。

おたのしみに。

本日もおつかれさまでした!


基礎をかためる英語講義:第二回(全15回) 母音
2023年9月公開


本日は、全15回講義の第2講義となります。

本日の目標は、すべての母音を理解してしまおう、です。
子音は、つぎの第三回でやります。

なぜ母音と子音をまなぶ必要があるのでしょう?
母音と子音がわかれば、何が理解できるのでしょう

それは、音節をつくる部品がそろうということです。
前回講義でやりましたとおり、英語のしくみとは、大まかにいいますと、

 子音+母音+子音 = 1音節
 1音節 = 1つの意味 = 1語

です。

母音すべてと子音すべてがわかれば、パターンとしてはそれ以上は存在しません。
これが、日本語でいうところの「五十音表をまなぶ」にあたるわけです。
これをやらないことには始まらないわけです。
ここをスタート地点にすれば、日本語とおなじで、やっと英語がブロックになります。
言語が積み木やレンガみたいに見えてくるわけです。また、そのように聴こえてきます。

基礎をかためれば百戦あやうからず、です。
さっそくはじめまたいと思います。

英語には母音と子音、ぜんぶでいくつあるでしょうか。
母音はぜんぶで15個あります。この「15」という数字は憶えておいてください。
諸説あって、もっと多いという人もいるのですが、とりあえず「15」でいかせてください。

日本語は母音が五つしかありませんから、英語は母音が15もある、と聞くと多いと感じるかもしれません。
でも、英語には漢字も無いわけですから、母音と子音がおわったら、基礎のすべてが片付いたといって過言ではないわけです。

子音のほうはいくつあるかご存知ですか。
ぜんぶで24個と考えられています。

今日と次回でそのぜんぶをやってしまおうと思います。
音を理解するコツを伝授しますので、ぜひお付き合いください。
そのコツというのは、ざっくり言いますと、
「この単語とこの単語は母音が同じである」
「この単語とこの単語の子音が同じである」
というふうに考えることです。
舌の位置がどうのこうの、口のかたちがどうのこうの、というのはおすすめしません。
そんなことをやっても永久に英語は言えるようにならないのです。

さて、お断りがあります。
母音と子音の勉強をする、と言ったものの、発音の練習はほとんどやりません。
やるにしても最小限にとどめたいと思います。
本日やりたいことは、母音の全体像をつかむことです。
全体像をつかまないことには、やる気もわきませんし、達成感もありません。
なにができているのか、なにができていないのか、どこまでやったら大体終わりなのか、それを知る必要があります。

全部で15あるという母音には、どのようなものがあるのか、それを見てゆきましょう。
母音も子音も、数にかぎりがあります。有限です。無限にあるのではないのです。
それが出来るようになれば終わりです。
そうしましたら世の中にあるすべての英語の単語がばっちりに発音できるようになります。
結局、言語とはパターンの組み合わせで出来上がっているだけです。
音節できっちり発音できればリスニングもできるわけです。
逆に音節できっちり発音ができなければリスニングはできません。

母音の全体像をつかんで、スタート地点に立ちたいと思います。
今日は気楽にかまえてください。
ざっと読んでいただいて、全体像を掴んでいただければおわりです。
でもそこが大切なのです。

それではまいりたいと思います。

[1]母音 基本の10個 ①〜⑩

まず、母音というものがどのように体系だてられているかを考えます。
母音をあらわすアルファベットは原則として五つかありません。
a e i o u の五つです。
これは誰でもしっていますね。
(五つ、つまり日本語の母音とおなじです。ちがう言語なのに、すこし不思議なことです。)

日本語をはなす人は、日本語の母音についてどう考えているかといいますと、
「母音は五つある、それはア・イ・ウ・エ・オだ」とかんがえています。
では、英語をはなす人は母音のことをどのようにかんがえるのでしょうか?

英語をはなす人は、こう考えています。
「母音には五種類あり、それぞれに〈ながいほう〉と〈みじかいほう〉がある。だから基本の母音が10個ある」。

言いかえますと「a」「e」「i」「o」「u」の五つについて、
それぞれに「ながいほうの発音の仕方」と「みじかいほうの発音の仕方」の二つがある、ということです。
具体的にいいますと、「a」の「ながいほう」の発音方法は「エイ」(エーではありません)で、「a」の「みじかいほう」の発音方法は「ア」ということです。

これで大体の見当がついたかもしれません。
「i」の、ながいほうの発音方法は「アイ」であり、みじかいいほうの発音方法は「イ」です。
「u」の、ながいほうの発音方法は「ユー」または「ウー」であり、みじかいほうの発音方法は「ウ」です。
「e」は、ながいほうが「イー」で、みじかいほうが「エ」です。
「o」は、ながいほうが「オウ」(オーではありません)で、みじかいほうが「オ」です。

つまり、「ながいほうの発音方法」というのはアルファベットの読み方そのままです。
「みじかいほうの発音方法」というのは、僕たち日本語話者でいう「ローマ字読み」です。
目から鱗が落ちるような、簡単な仕組みでしょう?
15個あるという母音のうち、これで10個ぶん、だいたい分かっていただけたと思います。

(ただし、「ながいほう」と云うのは、あくまでそう呼んでいるだけで、長く伸ばす、との意味ではありません。「みじかいほう」と云うのも、短く切らなければならない、という意味ではありません。これは、だいたい二重母音か単母音か、というような意味です。あまり気にしないでください。)

それぞれ、声にだして確認してゆきましょう。

英語は声にだしてください。
「もともと自分の発音がよくないばあいは意味が無いのではないか?」
と思われるかもしれませんが、それは心配におよびません。
なぜかといいますと、とにもかくにも英語の学習は、
「発音がさきか、リスニングがさきか」とか、
「読書がさきか、会話がさきか」とか、
「文法がさきか、実践がさきか」とか、
「読解力がさきか、単語力がさきか」とか、
ニワトリがさきか卵がさきかのような問題に悩まされるものであり、
僕が思うに、この問いに対する解はたった一つです。それは、
〈両方をやっていけば、すこしずつほぐれてくる〉
です。
ですから「順序立ててやらないと効果がない」という心配は無用です。
むしろ、それぞれを両方からやらないとダメということです。

声をだすことが何より大事です。
ぜんぶ一音節の単語ですので、一音で言ってください。
かたまりごとに、同じ母音をならべてあります。
さきほど言いましたように、ひとまず10種です。

make   つくるという意味
bake   焼くという意味
face   顔という意味
ape   猿という意味
brave   勇敢である、という意味
fate   運命という意味

bee  蜂(はち)という意味
knee  膝(ひざ)という意味
tree  木(き)という意味
steel  鉄(てつ)という意味
eat  たべる(食べる)という意味
steal  ぬすむ(盗む)という意味
me  私(わたし)という意味

Mike  男の名前
nice  いいね、という意味
ice  こおり、という意味
kite  凧揚げのたこ、という意味
bike  自転車、という意味

nose  鼻(はな)という意味
stove  暖炉(だんろ)という意味
so  こんなにも、という意味
go  行くという意味の動詞
boat  小舟(こぶね)という意味
coat  防寒用上着という意味
soap  せっけんという意味

cute  (かわいい、という意味)
tune  (合わせる、という意味)
June  (六月という意味)
use  (使う、という意味)
mute  (音を消す、という意味)
moon  (月、という意味)
spoon  (さじ、という意味)
scoop  (すくう、という意味)
pool  (水溜り、という意味)
stool  (いす、という意味)

cat  猫(ねこ)という意味
bag  鞄(かばん)という意味
man  男という意味
scan  スキャンするという意味
have  所持するという意味

pet  飼っている動物という意味
net  網(あみ)という意味
met  meetの過去形
bed  うえに寝るための家具

big  大きいという意味
hip  おしりという意味
pick  拾うという意味
lip  くちびるという意味
stick  棒という意味
Nick  人の名前

Bob  人の名前
hot  熱いという意味
not  否定の意味  
got  getの過去形
clock  時計という意味

cut  切るという意味
but  しかしという意味
hug  抱きしめるという意味
cup  湯飲みという意味
tub  大きな容器という意味


はい、おつかれさまです。
かたまりで同じ母音であることが確認できたでしょうか。
自分の声を自分の耳で聴いていただきたいのです。
そうやってゆっくりリストを読んでもらえれば、力がついてくると思います。
いまは、上手に発音できなくてもかまいません。
母音15のうちにそういう母音があるんだ、と知っていただければ、それでよいのです。

それぞれの説明をくわえます。

① まず、「a」のバリエーションの「長いほう」はアルファベットそのままで「エイ」です。「エーイ」もいいかもしれません。
「エー」は間違いです。「エー」はもう言わないようにしてください。
これからは発音記号 [eɪ] と記すことにします。

② Eのバリエーションで長くよむほうは、アルファベットそのままで「イー」です。
日本語とほとんど同じです。
これからは発音記号で [iː] と書くことにします。

③ 「i」の「長いほう」はアルファベットそのままで「アイ」です。または「アーイ」もいいかもしれません。
これからは発音記号 [aɪ]と記すことにさせてください。

④ Oのバリエーションで長いほうは、アルファベット読みで「オウ」または「オーウ」です。
「オー」ではありませんので気をつけてください。
たとえば、「note」ですと「ノウト」または「ノーウト」です。「ノート」は間違いです。
発音記号で[oʊ]と記すことにさせてください。

⑤ Uのバリエーションで長くよむほうは「ユー」または「ウー」。
これは日本語とほとんど同じ音です。
これから発音記号で「juː」「uː」と記すことにさせてください。


つぎに「短いほう」にまいりましょう。

⑥ 短いほうの「a」は「ア」です。
ただし、これはちょっと説明が必要です。
「ア」に相当する英語の発音がたくさんある、と学校で教わりませんでしたか?
僕はそう習ったのです。

「ア」の種類がいくつあると云われているかと言いますと、全部でだいたい四つです。
しかし最終的にはたった一つに絞られます。いまから説明します。

(1) つよいア([æ]で記すことにする) bad、mad、dad、back、Sam など
(2) きれいなア([ɑ]で記すことにする) watch、tall、small、all、father、water など
(3) よわいア([ʌ]で記すことにする) cut、luck、up、enough、rough
(4) 非常によわいア([ə] で記すことにする)・・・「あいまい母音」と呼ばれているもの。

(1)「つよいア」= [æ] というのは、ちょっと汚いかんじで、羊が「メェ~(メァ~)」と鳴くかんじでおねがいします。
「短いほうのa」とはすなわち、この(1)「つよいア」のことです。

(2)「きれいなア」= [ɑ] は、音としては日本語の「ア」とほぼ同じ音です。ですから発音は簡単なのですが、ちょっと驚かれるかもしれませんが、これはあとで説明する「短いほうのo」なのです。
ですから、あとでまとめて説明します。
大半の英語をしゃべる人はこれを「a」の仲間と考えていないようです。

(3)「よわいア」は、スペルのほうを見ていただいたらわかると思いますが、これはじつは「短いほうのu」なのです。
ですから、あとの「u」のところで説明します。
日本語話者には「ア」と聞こえるので、「a」の一種というふうに思われているだけです。

(4)は、俗にいう「あいまい母音」です。
これもあとで説明します。気にせず前にすすみましょう。

いかがでしょうか、これで「短いほうのa」はたった一つしかなく、(1)の「つよいア」つまり [æ] だけ、ということが分かっていただけたでしょうか。

それでは、つぎへまいります。

⑦ 「e」のバリーションで短くよむ場合は「エ」です。
「だらんとしたエ」と考えてください。だらんとすると同じく「ア」みたいになってきます。それが正解です。
ひとつお願いがあります。「ッ(ちいさいツ)」をつかわないようにしてください。
というのは、英語には促音(そくおん)すなわち「ちいさいツ」というのは無いからです。
bed(寝具という意味)の場合だと、「ベド」または「ベード」というほうが良いと思います。「ベッド」はやめましょう。「ベーッド」だといいかもしれませんけどね、このへんは文字で伝えるのはむずかしいところです。
発音記号は [e] と書くことにします。

⑧ 「みじかいほうの〈 i 〉」は、「イ」です。
「だらんとしたイ」と考えるとよいでしょう。口や喉のみならず、顔や全身をだらんとさせる、そして声そのものをだらんとさせると、言っている本人も「イ」なのか「エ」なのか、違いがわからなくなってきます。それが正解です。
おなじく、「ちいさいツ」はつかわないようにしてください。たとえば、「kick(蹴るという意味)」ですと「キク」となります。「キーク」でもよいかもしれません。「キック」はいけません。(キーックはいいかもしれないんですけど。文字で書けないのがもどかしいところです。)
全身をだらんとして発音すると、「ケク」「ケーク」または「ケーック」みたいになってきますから、それが正解なわけです。
「big(大きいという意味)」は「ビグ」または「ビーグ」ですし、または「ベグ」「ベーグ」です。
「hip(おしりという意味)」は「ヒプ」または「ヒープ」ですし、または「ヘプ」「ヘープ」です。
これから発音記号で [ɪ] と記すことにさせてください。

⑨ つぎは短いほうの「o」、すなわち「オ」です。
「だらんとしたオ」、発音記号では [ɔ]と記すことにします。

この音には、ちょっと事情があります。
この音はたいていの場合、さきほど説明した「きれいなア」になるのです。
ざっくり言うとイギリスでは「オ」[ɔ] で、アメリカでは「きれいなア」[ɑ] になります。
(イギリス英語とかアメリカ英語とかに分けて分析するのは、いろいろ理由があって、僕は良いことと思いませんので、その話にはあまり立ち入りませんが。)
下記の例を、その両方で声にだして読んでみてください。

Bob [bɔb]または[bɑb]  人の名前
hot [hɔt]または[hɑt]  熱いという意味
not [nɔt]または[nɑt]  否定の意味  
got [gɔt]または[gɑt]  getの過去形、過去分詞形
clock [klɔk]または[klɑk]  時計という意味

ただし、「両方でつかいわけて言えるようになる」というのが重要なのではなく、むしろ「どっちで言っているのか自分でもよくわからない」というのが目標地点です。

スペルは「o」ではなく「a」になりますが、下記も同じです。
両方の音で声にだして読んでみてください。

all  [ɔl]または[ɑl]  すべてという意味
small  [smɔl]または[smɑl]  ちいさいという意味
tall  [tɔl]または[tɑl]  背が高いという意味
call  [kɔl]または[kɑl]  呼ぶという意味
talk [tɔk]または[tɑk]  しゃべるという意味
walk  [wɔk]または[wɑk]  歩くという意味

おまけに、下記のような単語も同じです。[ɔ]でも[ɑ]でも、どちらで発音してもよいでしょう。両方で練習しておくと力がつきます。

water  水という意味。
father  父親という意味。

ところで、ここはものすごく重要と僕は考えています。
たとえば、talk(しゃべる)はカタカナで書くと「トーク」だと誰もが思っているのですが、じっさいには大半の英語話者は「ターク」と言っているわけです。スペルもそうなっています。
話者がトークと言っていないのにトークだと思っている限りは、talkを聞き取ることができません。
同じようにスモールと言っていないのにスモールだと思っている限りは、smallを聞き取ることができません。
これが、言葉のしくみ(音節と母音と子音)がわかれば、リスニングが出来るようになるのだと言う理屈です。

はい、つぎで基本の十個のさいごです。

⑩ 短く発音するほうの「u」は、「ウ」ということになります。
「だらんとしたウ」と考えるのがよいでしょう。思いっきりだらんとさせると、しまいに「ウ」なのか「ア」なのか、自分でもわからなくなってきます。それが正解です。

「but」(しかし、という意味)や「cut(切る、という意味)」という単語がこれです。
この単語をたいていの人は「バット」「カット」と読むようになっています。
しかし先ほども言いましたように、スペルの通りで、英語話者はこれを「a」ではなく「u」の一種とかんがえています。
じっさい、発音をよく聴いてみれば、「but」は「ブト」、「cut」は「クト」、「cup」は「クプ」のように発音していることに気づくと思います。

口や喉、顔や首そして全身を、思いっきりだらんとさせると、ブトなのかバトなのか、はたまたボトなのか、わけがわからなくなってくると思います。それが大正解です。
発音記号はたいてい [ʌ] で示すのが一般的です。
ちなみにギリシャ文字の「ʌ」はラムダとよばれているもので、アルファベットの「L(エル)」に対応するものです。かたちが「A」とにていますがまったく関係ないので、むすびつけて考えないでください。

さて、追記があります。短いほうの「u」にはもう一つあるとされています。
そちらのウを、僕は「すこしはっきりしたウ」と呼んでいます。
すこしはっきりしたウ( [ʊ] で記すことにする)・・・book、foot、look、cook、など

また、先ほども言いましたように、「ッ(ちいさいツ)」をつかわないようにしてください。
たとえば、book(本という意味)の場合だと「ブク」となります。「ブーク」でもよいかもしれません。「ブック」はちがうわけです。

といいましても、ここで云う「すこしはっきりしたウ [ʊ] 」と「だらんとしたウ [ʌ] 」はほとんど違いがありません。無理に、言いわける能力や聞きわける能力を身につける必要はないと思います。(発音のくわしい説明はまたあらためてやります。)

・・・おつかれさまです!
以上で「ながいほう」「みじかいほう」の母音についてのコメントはおわりです。

これで、いくつ母音の勉強をしたでしょうか。
基本の母音は10であると最初に言いましたが、
短いほうの「a」は「つよいア」 [æ] ですが、くわえて⑪「きれいなア」[ɑ] も紹介しました。
短いほうの「u」は「だらんとしたウ」[ʌ] ですが、くわえて⑫「すこしはっきりしたウ」[ʊ] も紹介しました。 
そういうわけで、二つが加わりましたので全部で12の母音を学んだことになります。
・・・ということはあとたったの三つです。

ひとまずおつかれさまです!

さあ、それでは母音のこりたった三個にまいりましょう。
これをやったら、母音はおわりです。
そのまえに、休憩したい人は休憩してください。
一気にやるとお腹いっぱいだと思いますので。


[2]母音 のこり三つ

はい、先にすすんでよいでしょうか。
のこりの母音三つについて説明したいと思います。

のこり三個あるという母音のうち二つは「二重母音」というやつです。
二重母音というやつ、はすでに登場していますね。
「エイ」[eɪ]
「アイ」[ɑɪ]
「オウ」[oʊ]
の三つをすでに紹介しました。
ここに二つ追加したいのです。
それは、⑬「アウ」 [ɑʊ] と⑭「オイ」 [ɔɪ] です。
それでは、単語を読んでみてください。

now ( [n] + [ɑʊ] ) 今、という意味
cow ( [k] + [ɑʊ] )牛、という意味
down ( [d] + [ɑʊ] + [n] )下に、という意味
couch ( [k] + [ɑʊ] + [tʃ] )寝椅子、という意味
found ( [f] + [ɑʊ] + [n] + [d] )findの過去形、過去分詞形

boy ( [b] + [ɔɪ] ) 男の子、という意味
toy ( [t] + [ɔɪ] ) おもちゃ、という意味
coin ( [k] + [ɔɪ] + [n] ) 硬貨、という意味
join ( [j] + [ɔɪ] + [n] ) 参加する、という意味
noise ( [n] + [ɔɪ] + [z] ) 雑音、という意味
voice ( [v] + [ɔɪ] + [s] ) 声、という意味

ちょっと疑問をもたれるかたもいるかもしれません。
「now(今、という意味)」が、なぜ「n+o+w」(つまり従来の「子音+母音+子音」のパターン)と理解されるのではなく、「n+ow」とかんがえなければならないのか?
これは、じっさいに英語を話す人が now [nɑw] または [nɔw] と発音していないからです。(きっと、昔はそう発音していたんじゃないですかね。)
すみませんが、そこはそういうもんだと理解していただきたい。
nowの最後の「w」のところを、くちぶえをふくような、はっきりとした子音「w(ウ)」で発音すると、ちょっと可笑しくなってしまいます。
「ナウ」というよりは「ナァゥ」と書けば、すこし伝わるのかもしれません。

さあ、最後までやってきました。
15個あるという母音はいよいよ、のこり一つとなりました。
最後にのこっている母音が何か、わかる方はいらっしゃいますか?
当ててみてください。

さいごの母音、15個目の母音がなにかといいますと、それは、下記のような単語でつかわれている母音です。(いつものように全部同じ母音をあつめてあります。)

hurt  怪我をしたという意味
purse  小さいバッグという意味
surf  サーフィンするという意味
blur  あいまいでぼやけているという意味
work  働くという意味
worm  虫(むし)という意味
nerd  オタクという意味
third  三番目という意味
bird  鳥(とり)という意味
dirt  泥(どろ)という意味

これはまあ、カタカナで書くことのできない音です。
睡眠中のひとが寝言でカラスの鳴き真似をしているような。
食事中のひとがたべものを口いっぱいにほおばって何か言っているような。
僕の英語の師匠のカズ師(上川先生)は、犬がウーとうなって喉をならしている音である、と言っています。

この音は、だれかに尋ねるなり、耳にするなりして、「よしわかった」となるところまで探してください。
ちなみに僕個人はどう考えているかと言いますと、「関根勤がジャイアント馬場のものまねをする声を出せばよい」と考えています。
これは冗談でもなんでもなく、真面目な話、高校生のときに「これだ!」と思い、それ以来、この考え方で三十年以上、英語をしゃべっております。

発音記号は [ɝ] と記すことにさせてください。
これはヘンな字ですが、「E」を左右反転させて、ちょこんと右上に「r」をつけたものです。ちなみに、この音は子音の講義で再登場します


はい、これで15個です。いったんおしまいです!

これで15個の母音が登場したわけです。
ということは、
これからみなさんが英語を読むときも聴くときも、英語に接する時には、基本的には、その音はかならず、その15あるうちのどれかの音にちがいないわけです。
母音はかならずそこにありますので。

今日は、ここまで、結構長かったですね。おつかれさまです。
でもあとちょっとだけあるんです。


[3]追加の母音

すくない場合は15個ですが、だいたいの英語の本には、母音の数は20だとか26だとか、ちがうことが書いてあると思います。
なぜことになるのでしょうか。
下記、補足します。ここは読みとばしていただいても構いません。

まず、heart(心臓という意味)、park(公園という意味)、start(はじめるという意味)などにふくまれる母音があります。
この、いわば [ɑr] という音を母音の一つにくわえるという数え方があるわけです。
それもよいのかもしれませんが、母音+子音と思ってもさしつかえないでしょう。
park(公園という意味)= [p] + [ɑ] + [r] + [k] (子音+母音+子音+子音)
ですから、これは今日お話しした「きれいなア」[ɑ] です。

ただし、じっさいには「heart」や「park」は、 [r] を発音してもしなくてもいいのです。辞書にはだいたいこう書いてあると思います。
heart [hɑ:t] または [hɑrt]
park [pɑ:k] または [pɑrk]
start [stɑ:t] または [stɑrt]

このへんになってくると、イギリスだとかアメリカだとかニュージーランドだとか、さらにもっと細かい地方の差だとか、そんな話になってくるので、あまり気にせず前にすすむのが大事と思います。

そんなわけで、すくなくともスタート地点として、この15という数字にこだわってみて欲しいと僕は考えているわけです。

これと同じしくみのバリエーションも理解いただけると思います。つまり、母音のあとに「r」がついているために、諸説が登場することによって母音の総数がふえてしまう、という話です。

pork [pɔ:k] または [pɔrk] (豚肉という意味)
fork [fɔ:k] または [fɔrk] (突き刺して食べる食器)
pair [per] (二つで一組という意味)
fair [fer] (公平という意味)
ear [i:r] (耳という意味)
peer [pi:r] (仲間という意味)

それからコロンのような記号 [:] をことわりなく使いましたが、これは「音を伸ばすことが多い」という意味です。「伸ばさないといけない」という意味ではありません。
英語はどんな単語であろうとも、音を伸ばしても伸ばさなくても意味はぜったいに変わりません。これは大事なルールです。(日本語では、たいていの場合は音を伸ばすとちがう意味になります。)
この話はあらためてします。

さて、すこしだけ重要なやつが最後にのこってしまいました。
それは「あいまい母音」「シュワ(schwa)」と呼ばれているものです。
ふつうは、発音記号は [ə] と記します。 

僕の結論をいいますと、あいまい母音というのは母音の1つとして数えることに僕は反対なのだけれども、まあじっさいに世の中に存るわけで、仕方がないので母音の1つにかぞえて学習したほうが良いのだろうな、と。

でもむやみにあいまい母音の練習をすることには反対。
ちなみに、音としては、ほとんど [ʌ] と大差ありません。

あいまい母音については、ああでもないこうでもない、と議論するのはあまり実りがあると思わないので立ち入りません。
要するに「とばす音」です。
英語話者が、1つ1つの音節を明瞭に発音するのが面倒なので、ラクして、あいまいな発音で済ませてしまう不明瞭な音という現象、と理解していただければ問題ないと思います。

僕は、あいまい音を習得することよりも、むしろ「そのあいまい音がもとは何だったのか」をしっかりと意識することこそが、発音の能力やリスニングの能力に大いに役立って来るとかんがえています。
ですから、今後もこの講義では、どうしてもあいまい母音(シュワ)が必要なときだけにしか使いません。
たとえば、「コミュニケーション」でしたら、「クミュニケイシェン」と発音しなくてはならない、という説もあるのですが、僕は「カミュニケイシァン」のほうが良いと考えるわけです。

com-mu-ni-ca-tion [kəm]+[mju:]+[nɪ]+[keɪ]+[ʃən] (辞書にはこう書いてある)
  ↓
com-mu-ni-ca-tion [kɑm]+[mju:]+[nɪ]+[keɪ]+[ʃɑn]
または
com-mu-ni-ca-tion [kɔm]+[mju:]+[nɪ]+[keɪ]+[ʃɔn]

このようにシュワを使わないという方針をとらせてください。
こちらのほうが英語の理解のために近道だと考えるからです。
あらためて、リスニングのところでこの話はやります。

ごくろうさまでした、今日はこれでおしまいです!
終了するまえに、まとめましょう。


[4] まとめ

15の母音、そしてあいまい母音1つ、が存在することを知ったわけですから、
これから英語を読む場合は、すべての音が、15(または16)のうちのどれかの母音になっていなければおかしいわけです。
そう考えて、英語に接すると、見えてくる世界がずいぶん変わると思います。
そこが本講義の意味でした。

それでは最後に、母音に番号をふって、まとめてみましたので自分の声で発音してみてください。
自分の声を、自分の耳で聞いてくださいね。それが大事なんですよ。

① [eɪ] (ながいほうの「A」) 例:make, bake, face, ape, brave, fate

② [iː] (ながいほうの「E」) 例:bee, knee, tree, steel, eat, steal, me

③ [ɑɪ] (ながいほうの「I」) 例:Mike, nice, ice, kite, bike

④ [oʊ] (ながいほうの「O」) 例:nose, stove, so, go, boat, coat, soap

⑤ 「juː」および「uː」(ながいほうの「U」) 例:cute, tune, June, use, moon, spoon, scoop, pool, stool

⑥ [æ] (みじかいほうの「a」) 例:cat, bag, man, scan, have

⑦ [e] (みじかいほうの「e」) 例:pet, met, net, bed

⑧ [ɪ] (みじかいほうの「 i 」) 例:big, hip, pick, lip, stick, Nick

⑨ [ɔ] (みじかいほうの「o」、日本語のオ) 例:Bob, hot, not, got, clock, bought, thought, all, small, call, walk, talk

⑩ [ʌ] (みじかいほうの「u」) 例:cut, but, hug, cup, tub, rough, cough, tough

⑪ [ɑ] (みじかいほうの「o」の別種、きれいなア) 例:Bob, hot, not, got, clock, bought, thought, all, small, call, walk, talk(⑨とおなじ!)

⑫ [ʊ] (みじかいほうの「u」の別種、すこしはっきりしたウ) 例:book, cook, foot, took

⑬ [ɑʊ] 例:now, cow, down, clown, couch, found

⑭ [ɔɪ] 例: boy, toy, coin, join, noise, voice

⑮ [
ɝ] 例:hurt, purse, surf, blur, work, worm, nerd, third, bird

はい、おつかれさまでした!
今日は、母音をすべて網羅いたしました。
今回はながい講義でしたので、お疲れのこととおもいますが、英語の母音をすべて網羅したのですから、今日はあなたにとって記念すべき日です。

次回講義では、子音の説明をします。
子音は母音にくらべて、やさしいので今日のようなながい説明にはなりません。ポイントをしぼって説明しますので、気をラクにして講義をうけてください。

ご拝聴ありがとうございました。


第二回講義「母音」について質問やご意見 → こちら
第三回講義「子音」へすすむ → こちら


基礎をかためる英語講義 第一回(全15回)
2023年9月公開

それではイントロダクションでおつたえしたとおり、「英語の正体とは何か」というところに一気に切り込みます。
英語で、日本語でいうところの五十音表にあたるものはいったい何なのか、という話のつづきです。


英語はとてもシンプルです。
下記の仕組みが英語のもとになるもの、です。

子音+母音+子音 → 1音節
1音節 → 1つの意味
1音節 → 1単語

これが英語の黄金ルールです。
このルールが身に付けば、英語はものにしたも同然、です。

この法則にしたがって、語をどんどんならべてゆきます。
ちょうど、おなじ形のレンガをどんどん並べるだけで、どんなものでも作れてしまうような感覚です。

ちゃんとしたレンガがなければ、いくら頑張っても積み上がっていきません。
基礎ができていれば百戦あやうからず、です。
やさしくじっくり説明してゆきます。

「音節(おんせつ)」というのが堅苦しくていけませんが、これは英語で「syllable(シラブル)」とよばれるものです。
「音節」などと、格好をつけて言わなくても、1音(いちおん)、2音(におん)などと呼びかえてもかまいません。
中国語の漢字でいうと漢字1個ぶんに相当します。
韓国語でいうとハングル(文字)1つに相当します。

英語ではたとえば、
bag(かばん) car(車両) cat(ネコ)
dog(イヌ) pen(ペン) hat(ぼうし) 

などの名詞もそうですし、下記、動詞もそうです。

run(走る)、take(とる)、get(手に入れる)
make(つくる)、dance(おどる)、chat(おしゃべりする)

もちろん下記のように、形容詞もおなじです。

red(あかい)、hot(あつい)、hard(かたい)
tall(背がたかい)、short(みじかい)、long(ながい

英語がでてきたばあいは、かならず声をだしてください。
二度でも三度でも、声に出していってみることが何より大事です。
目で追っているだけはゼッタイ禁止です。
日本語は、書かれた言葉にも価値があるのですが、英語には書かれた文字にはあまり価値がないと言ってよいと思います。
考えてみればそりゃあそうです、たったの26文字しかないアルファベットで書かれているのですから。日本語とおおちがいです。

書かれた英語というものは、じつは「このように音を出してほしい」と訴えるためだけにあるわけです。
書かれた英語を声に出して読んでも、情報はいっさい抜け落ちません。
日本語の場合は、書かれたものを読み上げると、情報がずいぶん落ちてしまいます。

とにかく、英語は声にだしてください。

上にあげた単語は、ぜんぶ同じ調子で「子音+母音+子音」になっているでしょう?
そして、これでひとつの言葉(単語)をつくります。

日本語の場合は1音だけだと、意味をもちません。
「あ」とか「い」とか、「く」とか「せ」とかには意味がありません。
だいたい2音(ひらがな2文字)や3音(ひらがな3文字)ほどになって、意味がともなってきます。
「くも」「いぬ」「やま」「あし」「ほし」「そら」・・・
「あたま」「つくえ」「ひつじ」「くるま」・・・

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英語は1音でひとつの単語になります。
日常会話でつかう基本的な単語は、八割がたが1音節の単語です。
これが英語の出発点です。

それでは、音節のつくりかたを説明します。

英語には母音がいくつあるかご存知ですか。
15個あります。
諸説あるとはいえ、まあ15〜20強として差し支えないでしょう。
そこで、母音を、どれでもいいので、一つを持ってきます。
これが音節の核となります。

手始めに、母音「O」をつかってみることにしましょう。
これは、カタカナで書くならば「オウ」と読みます。
発音記号で [oʊ] と書くことにします。
日本の人はよくオーと言いますが、それは間違いで、「オウ」です。
これからは「オウ」と口にするようにしてください。
オーといわないようにしてください。

これの前に子音を一つくっつけます。
その後にも子音を一つくっつけます。
これで一つの音節(おんせつ)ができあがるわけです。
同時に、一つの〈単語〉ができあがります。

たとえば、[k]という子音を前につけてみましょう。
そして[t]という子音を後ろにつけます。
声に出してみてください。
これで、1音節が完成し、これはそのまま一つの「防寒用上着」という単語になっているわけです。

ちなみに、綴りは「coat」ですが、英語では発音と綴りは同じではないので、そこを考えすぎないように心がけてください。
じっさいの英語と表記、つまり発音とスペルの関係については、第五章でしっかりお話ししますので、そのときにスッキリするはずです。
いまはもやもやすると思いますが、気にせずにどんどん進んでください。

つぎは、アタマに[n]、オシリに[t]をつけてみましょう。
(ちゃんと声にだしてみてください。)

[n] + [oʊ] + [t] = ?

すると、「忘れないためのみじかい文章」という単語が完成しました。(綴りは「note」です。)
このようにして1音節が完成し、しかもそれが1語として成立するのです。

アタマにつける子音と、オシリにつける子音を変えれば、無限大にバリエーションが生まれます。
さきほどもいいましたように、母音は15個あります。
子音は24個あるとかんがえられています。
これで、組み合わせてゆくと1音節だけで無数につくることができるわけです。

この法則だけで果てしなく進むことができます。
これが英語の正体です。
しーんと無音のところへ、たったの一音を発します。
いうならば、打楽器をかるく一回だけ叩くようなかんじです。
するとそこに言葉がうまれ、意味もうまれるんですね。

日本語はちがいます。1音だけでは意味はつくれず、2音や3音(さらにはもっとたくさん)をだしていかないと意味がうまれませんので、つらつらと音をだしてゆきます。
結果的に、川がながれるように音がつらなります。
英語は打楽器をボン、ボン、ボンと鳴らすような言語です。
日本語はムニュムニュと細い音の笛を鳴らすような印象をつくる言語です。

英語では、1音を1音として存在感のある発音をしましょう。
これは本当に大事なことです。
なぜ大事かというとそれが英語だからです。

もうすこしやってみましょう。
声にだしてみてください。英語は声にださなければ意味がありません。

つぎは、アタマに[b]、オシリに[t]をつけてみましょう。

[b] + [oʊ] + [t] = ?

すると、「小舟」という一音節、一単語が完成します。
あ、さきほども言いましたが「オー」じゃないですよ、「オウ」です。忘れないでください。
つぎは、アタマに[s]、オシリに[p]をつけてみましょう。

[s] + [oʊ] + [p] = ?

すると、「せっけん」という一音節、一単語が完成します。

ちゃんと口に出せば、けっして難しくないと思います。
つづりは、いま気にしたくありませんので書きません。
(つづりを気にしちゃうと、これまでの紙のうえばかりの英語学習に逆戻りです。)
それでは、ほかにももうすこし例をあげますので、声にだして実感してください。

まえに [n] うしろに [z] → 鼻という意味になる
まえに [b] うしろに [t] → 小舟という意味になる
まえに [s] うしろに [p] → 石けんという意味になる
まえに [v] うしろに [t] → 投票という意味になる
まえに [h] うしろに [l] → 穴という意味になる
まえに [h] うしろに [m] → 家という意味になる
まえに [g] うしろに [l] → 目標という意味になる
まえに [h] うしろに [p] → 希望という意味になる

こんな感じで、たったの一音節であるにもかかわらず、大量に言葉がつくられてゆきます。

では、母音を交換してみましょう。
アルファベットの一番最初の文字がありますね、「A」です。
これは「エイ」と読みます。
ほとんどの人が「エー」と思っているのですが、そうではなくて「エイ」です。
発音記号では[eɪ]と記すことにしましょう。
その前後にいろんな子音をくっつけてみます。
スペルはどうせご存知でしょうし、今はむしろスペルを忘れてほしいところなので、ひきつづいて省いちゃいます。

前に[k]、うしろにも[k]をつけてください。
口にだしてみてください。
どうですか、一音一単語で洋菓子という意味の言葉になったでしょう。

前に[d]、うしろに[t]をつけてください。
口にだしてみてください。
どうですか、一音一単語で日づけという意味の言葉になったでしょう。

前に[g]、うしろに[m]ではどうですか。
一音として、声にだしてみてください。
遊びという意味の言葉になったでしょう。

前に[g]、うしろに[t]ではどうですか。
門(もん)という意味の言葉になったでしょう。

前に[f]、うしろに[s]ではどうですか。
顔、という意味の言葉になったでしょう。

こんな感じです。
これが英語の音節です。
母音が一つで、前後に子音がくっつく。
これを音で理解してください。
文字で、紙のうえで理解してもダメです。
つまり、自分の口で言えるようになっていただきたいのです。

いま、発音の練習をしているのではないことにご注意ください。
英語の「仕組み」の話をしています。
それは「音としての仕組み」という意味です。
言語というのは文字ではなくて音ですから、「音としての仕組み」などというのは馬鹿げた言いようではありますが。
ようするに「英語の仕組み」です。
くりかえしますが、発音の勉強、ましてや発音記号の勉強をしているわけではありません。
発音記号は、どのように声で読むか念のため書き添えているにすぎません。

そういうわけで、この仕組みが何よりも大事です。

「子音 + 母音 + 子音」 = 1音節

なぜそんなにしつこく言うのか・・・これが英語の土台だからです。
これを理解していなければ、五十音表をしらずに日本語を勉強しているようなものです。
そして、英語は、果てしなくどこまでいってもこればかりです。

どこまでいってもこればかり、というのはどいういうことでしょうか。
二音節の言葉をかんがえてみましょう。
たとえば、サッカーというスポーツがありますね。
これは、英語で「soccer」と書きます。
これは「soc」+「cer」の二つの音節でつくられている単語なわけです。
「子音+母音+子音」が二つ並んでいるのがわかるとおもいます。
ですから、サッカーというのはじつは間違いで、
いうなれば「ソック・カー」なわけです。
一つ目の音節は足という意味です。くつしたのことをソックスというのと同じです。
二つ目の音節は「何々するもの」というような意味です。
そういうわけで「足でやるもの」ってかんじの言葉です。
英語を話している人は「soc」+「cer」と思って発音しているわけですから、
いくら日本人の耳で「サッカー」と聞こえるからといって「サッカー」だと思い込んでしまうと、
実際には誰もサッカーと言っていないわけですから、いつまで経っても聞こえないわけです。
そうなるとリスニングは永久にできるようになりません。
逆に、「どのように言っているのか」がわかれば、リスニングはすぐできるようになります。
リスニングについては、第五講義で本格的にやってみたいと思いますので、たのしみにしていてください。
リスニングの目標は、「知らない単語が聴けるようになる」です。
これができるようになりましたら、世の中の英語がぜんぶ聞き取れるようになるわけです。

音節で分解することなしに単語を知ることはできません。
漢字で言うならば「村」「机」「柱」という漢字は覚えるけれども、「木(キヘン)」というのは習ったことがない・・・。そんな学習法はぜったいにオカシイのです。
なんども書いていますが、「音節をならべる」という考え方ナシに英語を学ぶというのは、ひらがなを知らずに日本語を勉強するようなものです。


さて、話をもとにもどします。
もうお気づきかと思うのですが、音節のしくみにはバリエーションがあります。
とはいえ、母音が一つだけ存在する、ということはかわりません。子音のつきかたが変わるだけです。
子音が無い場合があります。
子音が二つになる場合があります。
パターンはかぎられていますが、子音が三つになる場合もあります。
いちおう書き出してみましょう。

      母音
   子音+母音
   子音+母音+子音
      母音+子音
子音+子音+母音
子音+子音+母音+子音
子音+子音+母音+子音+子音
・・・などなど

母音はひとつで、子音のひっつきかたが変わるだけです。
もっと子音がふえる可能性もあります。
たとえば「strike(野球のストライクまたは労働交渉のストライキ)」という単語でしたら、子音がまえに三つ、うしろに一つ付いています。これで一音節、一単語になるわけです。べつにめずらしいことではありません。

母音 [ei] の前後に子音がこのようについたらどうでしょう。

前に [m] うしろはナシ = ? (五月という意味)
前に [s] うしろはナシ = ? (言うという意味)
前はナシ うしろに [k] = ? (痛み、という意味)
前はナシ うしろに [s] = ? (トランプやさいころの「1」の意味
前に[s]と[t] うしろに [t] = ? (状態という意味。またはアメリカなどの州という意味)
前に[s]と[k] うしろに [t] = ? (滑るという意味)

音節が二つ以上で、さらにあたらしい単語をつくります。

today(今日)= to + day
yesterday(昨日) = yes + ter + day
trumpet = trum + pet
airport = air + port
international = in + ter + na + tion + al (5音節)

英語はぜんぶこれでできているんですよ。
これ以外は無いわけです。
どんな英語の言葉も表現も、会話も名文も、ぜんぶ同じしくみのレンガというのかコロッケというのか、とにかく「音節」をどんどんと並べているだけにすぎないわけです。

いま、理解していただきたいことは、一つ。
《子音+母音+子音》というかたまりで、コロッケのようなものというのか、レンガのようなものというのか、が一つ作られるということです。

さらに、(これが本当に大事なことなのですが)英語は基本的な単語は全部1音節だということです。
下記のような単語が、基本は《子音+母音+子音》でなりたっていることを、自分で口に出してたしかめてください。
スペルにまどわされてはいけません。英語ではスペルは重要ではないのです。
(もちろん、どちらかの子音がない場合や、子音が二つかさなっているものもあります。)

head(頭)、eye(目)、mouth(口)、chest(胸)、leg(脚)、foot(足)などなど
I(わたし)、me(わたし)、you(あなた)、your(あなたの)、he(あの人)などなど
play(遊ぶ)、do(する)、run(逃げる)、jump(跳ぶ)、fly(飛ぶ)などなど
cry(泣く)、laugh(笑う)、smile(ニコッとする)、sad(悲しい)、mad(怒っている)などなど

おつかれさまです!
第一回の講義で学ぶことは、これで終わりです。
簡単でしょう?
このレンガができましたら、それを並べてゆきます。
レンガをどんどん並べていくだけで英語が出来上がってゆくんですよ。
日本語みたいにややこしい「助詞」とか「活用」とか、ほとんど無いわけですから簡単です。
簡単すぎて感動すると思います。楽しみにしていてください。

ただし、初心者のかたは、まだまだレンガに対する慣れが足らないと思いますので、じっくり「1音節が大事」という感覚に、つぎからの講義で慣れてほしいと思います。
そのためには、母音と子音をやっつけなくてはいけません。
むずかしくありませんから、一緒にやっていきましょう!

それでは、第一回の講義のまとめをやっておわりにします。


《まとめ》

おなじことばかり言いますが、下記が英語の土台であるということです。

 ・子音+母音+子音 = 1音節

 ・この原理はこわれることはないが、子音の数でバリエーションがある。子音が無い場合、二つの場合、三つの場合などがある。

 ・1音節で、ひとつの意味をつくる

 ・1音節=1単語 が基本。


これと同じレベルのことを日本語について考えますと、日本語はこのような構造の言語です。

 子音 + 母音 = 1音節(音韻) = ひらがな1文字
 音韻二つか三つ → ひとつの語彙

(上記の根本原則は例外がいくつかありますが、詳細は省略させてください。)
ようするに、日本語とはこういう、もっちりとした団子をたくさん並べていくことで成立します。
日本語(=やまと言葉)の場合は、おおかたの単語は2音節でできています。もちろん1音節や3音節もありますが。
それに助詞がついて、活用して、それでやっと伝えるための言葉になってきます。
「わ」だけでは意味がなく
「わた」でも何のことか分からず、
「わたし」で言葉にはなりますがメッセージにはならず、
「わたしが」まで来て、やっとメッセージになってくるんですね。
ここが英語と大きくちがうところです。
「I」と、たったの1音を発した瞬間に、「わたしが」というメッセージになるわけです。
ですから英語の一音(一音節)というものは、とてもつよい意味をもっている、重い音なのです。だから僕は「レンガ」だと喩えで言いました。

今日はこれで終わりにします。
おつかれさまでした!
つぎからも、さくさくいきしょう。


全15講義の予定を書いておきます。
ぜひ、さいごまでお付き合いください。

第一講義 音節
第二講義 母音
第三講義 子音
第四講義 多音節と文
第五講義 リスニングその1
第六講義 文法その1
第七講義 文法その2
第八講義 リスニングその2
第九講義 日本語と英語
第十講義 越境
Lecture 11 - TBA
Lecture 12 - TBA
Lecture 13 - TBA
Lecture 14 - TBA
Lecture 15 - TBA
Final Exam
Graduation Ceremony


第一回講義「音節」についての質問またはご意見 → こちら
第二回講義「母音」にすすむ → こちら


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